「老後2000万円問題」の本質

先程も触れた「老後2000万円問題」ですが、そもそも本当に必要な金額なのでしょうか。実は、「2000万円」というのは全員にあてはまる数字ではありません。

「2000万円」という数字が生まれた根拠について、金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回 厚生労働省提出資料)から見ていきましょう。

老後2000万円問題の試算根拠

出所:金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回 厚生労働省提出資料)をもとにLIMO編集部作成

  • 実収入(主に年金):20万9198円
  • 実支出(主に食費):26万3718円

月々の赤字額=約5万5000円

老後必要額=5万5000円×12カ月×30年(老後30年と仮定)=1980万円≒約2000万円

つまり、無職の夫婦が老後を30年生きるにあたり、年金だけでは2000万円が足りなくなるという試算なのです。

ただし、こちらの収支は2017年の統計をもとに算出されたものです。さらに家族構成や居住地などは人によって様々なので、実際に必要となる金額はやはり個人で異なります。

当時「2000万円」という金額が大きく取り上げられたため、数字が独り歩きしている印象があるものの、冷静に個人の必要資金を試算する必要があるでしょう。

とはいえ、2000万円という数字は決して大きすぎる金額ではありません。

標準的な生活をする無職世帯の赤字額が2000万円とすると、年金が減少傾向にあり、賃貸住まいが増え、さらにインフレが進む今後の社会において、2000万円以上が必要になる可能性も十分あるのです。