11月7日、財務省の審議会が行われました。

かつてtwitterでもトレンド入りした「要介護1と2の保険外し」は、一旦見送られる形です。

ただし、介護を含む高齢者の社会保障は年々運営が厳しくなり、今後は負担が増えることが予想されます。

遠いように感じる「老後」や「介護」ですが、トレンド入りした現状を見ると、何かしらの危機感を感じている方も多いのではないでしょうか。

今回は、実際に祖父の介護を体験した30代女性の体験談をもとに、終活とお金、介護と幸せについて考えてみます。

介護のきっかけは認知症や脳卒中、転倒などが多い

Aさんは、実家で暮らす祖父の介護にいきなり直面することになります。90歳を超えても元気だった祖父ですが、転倒をきっかけに骨折し、リハビリを余儀なくされたのです。

内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、介護が必要になった原因は1位が「認知症」、次いで「脳血管疾患(脳卒中)」、「高齢による衰弱」、そして「骨折・転倒」が続きます。

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出所:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

出所:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

Aさんのケースでは、転倒をきっかけに手術・入院を経験したことで足腰が弱り、結果的に要介護者となってしまいました。

介護者は主に同居の家族が担うことが多いのですが、Aさんの場合は祖父の子どもである母がすでに他界しており、義理の子どもである父(同市居住)、そして孫であるAさん(他県居住)が介護をすることになったのです。

このように、いきなり介護に直面するケースは実はよくあります。

「介護費用は限度額まで」とは限らない

いきなり始まる介護には、容赦なくお金がかかります。具体的にはどのような費用が発生するのでしょうか。

要介護1~5と認定された方が利用できるサービス(介護給付)、また要支援1~2と認定された方が利用できるサービス(予防給付)として、例えば以下のものがあります。

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出所:厚生労働省「公表されている介護サービスについて」

出所:厚生労働省「公表されている介護サービスについて」

  • 介護サービスの利用にかかる相談、ケアプランの作成
  • 自宅で受けられる家事援助等のサービス
  • 施設などに出かけて日帰りで行うサービス
  • 施設などで生活(宿泊)しながら、長期間又は短期間受けられるサービス
  • 訪問・通い・宿泊を組み合わせて受けられるサービス
  • 福祉用具の利用にかかるサービス

介護サービスにはお金がかかりますが、原則として1割の負担で利用できます。

さらに、1ヶ月あたりの自己負担には限度額が設けられています。高額介護サービス費といって、所得に応じて限度額が決められているのです。

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出所:厚生労働省「サービスにかかる利用料」

出所:厚生労働省「サービスにかかる利用料」

Aさんの祖父のケースでは、負担の上限額は4万4400円でした。もしこちらを超えても、超えた分が返還されるのです。

上限があるとわかると、長引く介護の不安も少しは軽減されるように思えます。しかし、実際には上限までに収まるケースばかりではありません。

実際、Aさんの家庭でもさまざまな「介護費用」が発生したのです。

介護費用が上限を超えるケースとは

介護の自己負担には「高額介護サービス費」という1ヶ月あたりの上限があります。しかし、例外もあるのです。

高額介護サービス費の例外

  • 介護保険適用外のサービス利用費
  • 福祉用具購入費
  • 住宅改修費
  • 施設の居住費や食費
  • 利用限度額を超えた費用     など

Aさんの場合、実際に次の費用がかかりました。

  • 転倒防止のための手すりの設置費用
  • 入浴用品の購入費(足の高い椅子など)
  • 週に3回、シルバー人材センターに来てもらい家事を援助してもらう費用

介護の始まりには、介護度に応じたケアプランをケアマネージャーさんが作成してくれます。もちろん限度額の範囲内にて、プランを立てることが基本です。

しかし、Aさんの場合は同居の家族がおらず、施設への入居も難しかったため、平日に1度は誰かにお世話になろうと思うと、とても介護保険だけでは足りませんでした。

結果、以前からお世話になっているシルバー人材センターの方にお世話になることになったのです。

介護保険を優先し、足りない分をシルバーさんにお願いするイメージです。

介護される人のQOLも大切。そのためにはお金がかかる

また、介護される方のQOLも見過ごすことはできません。

Aさんの祖父は「ヘルパーさんではなく、慣れたシルバーさんに家事援助をお願いしたい」などの希望がありました。

できる限り叶えたい思いはありつつ、「介護保険を優先する」という制度の決まりは守らなくてはなりません。介護のプロでもあるため、そうした説明をしながら丁寧に折り合いをつけていったそうです。

しかし、一度家族で衝突してしまったことがありました。それが、週に1度の楽しみであった「デパートでの買い物」という趣味です。

骨折を機に介護生活となり、外出が困難となったため、これまでの趣味を諦めなくてはならなくなったAさんの祖父。

通っていたデパートでは曜日ごとに催し物があり、それに合わせて買い物にいくことが楽しみでしたが、それができなくなったのです。

できれば代わりにデパートに行って買ってきてほしいと頼まれましたが、AさんもAさんの父も仕事があるため、とても叶えることができません。

シルバーさんの仕事も可能時間が決まっているため、遠くのデパートへの買い出しは不可能です。このような贅沢な悩みに寄り添うことは難しく、最低限の介護で済ませたいとAさんは思ってしまったようです。

しかし、祖父はすでに90歳を超えており、「その楽しみがなくなるなら死んだほうがまし」とまで口にするようになりました。

大切な家族の願いと自分たちの生活を天秤にかける状況に、Aさんは苦しんだといいます。そこで、ある選択肢が生まれました。それが「家事代行」です。

買い物代行も可能ということで、結局Aさん一家はこのサービスを利用することになったのです。

買い物費用だけでなく、往復の電車賃と家事代行サービスの利用料がかさむため、かなりの金額になります。それでもAさんの祖父は、たとえ自分が行けないとしても、満足してくれたそうです。

Aさんの祖父は亡くなってしまいましたが、それなりに満足してくれたのではないか、とAさんは語ります。何より、AさんやAさんの父の後悔は、かなり薄まったはずだと言います。

介護保険は自分の貯金から

Aさんのケースでは、介護保険適用となる費用以外にもさまざまなお金がかかりました。その中には絶対に必要だったお金、そして無くても大丈夫だったお金もあります。

それでも自分が老後を迎えたとき、できるだけ希望を叶えたいと思う方はいるでしょう。Aさんは老後に慎ましく生きるつもりでしたが、楽しく生きる祖父を見て刺激をもらったと語ります。

「贅沢だ」と批判する声もあるかもしれませんが、贅沢かどうかを判断するのは自分です。そしてもちろん、それは自分がそれだけのお金を蓄えている場合のみです。

Aさんも祖父が十分な介護費用を貯めていました。「終活」として不動産等の整理をしつつ、自分自身の介護費用を備えていたのです。

そしてそれを支えるのが家族であることを理解し、かなり前から相続の整理等を進めていたとのこと。

本来相続遺産は孫に支払われますが、一番近い義理の息子(Aさんの父)が最も関わることを見越し、生前からお金についての話をしていました。

こうした関係性もあり、できる限り希望に沿った介護が実現したのではないでしょうか。

もちろん、今の高齢者と現役世代では、時代の背景が違うため「祖父ができたから自分もできる」とは言えません。

しかし、介護にお金がかかること、QOLを高めるためにはさらにお金がかかることを意識すると、今後のマネープランのヒントになるかもしれません。

まとめにかえて

実際に家族からみて「完璧な終活」を遂げたAさんの祖父のケースを参考に、介護にかかるお金を見ていきました。

介護度によっても費用は異なりますし、自宅介護か施設介護でも大きく変わります。時代の変化とともに、介護の有様もどんどん変わっていくでしょう。

しかし、「人生を豊かにする」という視点を持つとき、お金はとても重要な側面を持ちます。選択肢が増えるとも言えるでしょう。

一方で、老後資金ばかりを気にして今の生活を我慢しすぎるのもQOLの軽視だといえます。今の生活を守りつつ、将来のお金も確保する。難しいことですが、少しずつ考え始めていきたいですね。

参考資料

LIMO編集部