2022年7月29日、厚生労働省から最新の平均寿命が公表されました。「令和3年簡易生命表の概況」によると、男性の平均寿命は81.47歳、女性は87.57歳です。
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出所:厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」(2022年7月29日公表)
年金の受給開始年齢を65歳とすると、男性は約16年、女性は約22年、年金をもらうことになります。
ここまで長生きすることを想定していなかった公的年金制度では、現在改革案がいろいろ浮上していますね。現役世代の方たちは、一体いくら年金がもらえるのか不安になっていることと思います。
もし年金が少なかった場合、どうすればいいのでしょうか。実は2022年4月より、繰下げ受給で最大84%まで年金を増額できるようになっています。魅力的な制度の概要と落とし穴を詳しくみていきましょう。
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1. 年金受給額「繰下げ受給」で8割以上増える!
一般的な年金受給開始年齢は65歳ですが、年金の受給を65歳よりも後に遅らせることで、受給額を増やすことができます。これを年金の繰下げ受給制度といいます。
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出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」をもとにLIMO編集部作成
増額率 (最大84%※1)=0.7%×65歳に達した月※2から繰下げ申出月の前月までの月数※3
- ※1 昭和27年4月1日以前生まれの方(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方)は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までとなりますので、増額率は最大で42%となります。
- ※2 年齢の計算は「年齢計算に関する法律」に基づいて行われ、65歳に達した日は、65歳の誕生日の前日になります。
(例)4月1日生まれの方が65歳に達した日は、誕生日の前日の3月31日となります。 - ※3 65歳以降に年金を受け取る権利が発生した場合は、年金を受け取る権利が発生した月から繰下げ申出月の前月までの月数で計算します。
実際にどれくらい受給できるのが、66~75歳まで繰下げた場合の増額率を確かめてみます。
1.1 年金の「繰下げ増額率」早見表
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出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 66歳0ヵ月:8.4%
- 67歳0ヵ月:16.8%
- 68歳0ヵ月:25.2%
- 69歳0ヵ月:33.6%
- 70歳0ヵ月:42%
- 71歳0ヵ月:50.4%
- 72歳0ヵ月:58.8%
- 73歳0ヵ月:67.2%
- 74歳0ヵ月:75.6%
- 75歳0ヵ月:84%
なんと、最大で年金受給額を84%も増額することができます。
月額10万円の年金では心もとないと思っても、18万4000円に増えるなら十分な金額に思えますね。
老後資金を貯めるのが難しい場合、繰下げ受給をすれば手っ取り早く老後対策ができることになります。
しかし、繰下げ受給にはデメリットもあります。
2. 「年金の繰下げ受給」知っておきたいデメリット8点
年金を繰下げ受給すると聞いて、真っ先に思い浮かぶのが「長生きできなかった場合」ではないでしょうか。
75歳まで繰下げるつもりでも、その前に亡くなってしまえば年金が受け取れません。75歳まで生きられたとしても、数年で亡くなればやはりもとはとれないように感じます。
試しに年金月額を14万円と仮定してシミュレーションしてみると、80歳時点までは65歳受給がお得、85歳時点では70歳受給がお得、95歳時点では75歳受給がお得という結果になりました。
最新の平均寿命は、男性が81.47歳、女性が87.57歳であることを考慮すると、繰下げ受給のオトク度が減ってみえるかもしれませんね。
また、日本年金機構が注意喚起する繰下げ受給の確認しておくべき事項も見ていきましょう。
- 1. 加給年金額や振替加算額は増額の対象にならない。また、繰下げ待機期間(年金を受け取っていない期間)中は、加給年金額や振替加算を受け取ることができない。
- 2. 65歳に達した時点で老齢基礎年金を受け取る権利がある場合、75歳に達した月を過ぎて請求を行っても増額率は増えない。
- 3. 日本年金機構と共済組合等から複数の老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取ることができる場合は、すべての老齢厚生年金について同時に繰下げ受給の請求をしなくてはいけない。
- 4. 65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害給付や遺族給付を受け取る権利があるときは、繰下げ受給の申出ができない。
※ただし、「障害基礎年金」または「旧国民年金法による障害年金」のみ受け取る権利のある方は、老齢厚生年金の繰下げ受給の申出ができる
- 5. 66歳に達した日以降の繰下げ待機期間中に、他の公的年金の受給権(配偶者が死亡して遺族年金が発生した場合など)を得た場合には、その時点で増額率が固定されるため、年金の請求の手続きを遅らせても増額率は増えない。
- 6. 厚生年金基金または企業年金連合会(基金等)から年金を受け取っている方が、老齢厚生年金の繰下げを希望する場合は、基金等の年金もあわせて繰下げとなる。
- 7. このほか、年金生活者支援給付金、医療保険・介護保険等の自己負担や保険料、税金に影響する場合がある。
- 8. 繰下げ請求は、遺族が代わって行うことはできない。繰下げ待機中に亡くなった場合で、遺族の方からの未支給年金の請求が可能な場合は、65歳時点の年金額で決定したうえで、過去分の年金額が一括して未支給年金として支払われる。ただし、請求した時点から5年以上前の年金は時効により受け取れなくなる。
繰下げ受給を選択すれば、後から変更できません。受給開始が遅ければ遅いほど、それまでの生活費の確保も必要となるため、長く働くことも条件となります。
こうした注意点をしっかりと加味して選択する必要があるでしょう。
3. 繰下げ受給以外の方法の老後準備
繰下げ受給が難しい場合、その他の方法でも老後に備えることはできます。
例えば妻が扶養内パートとして国民年金にしか加入していない場合、この10月から対象が拡大された厚生年金への加入を検討してみるといいでしょう。
また、iDeCoや個人年金保険などを利用して、私的年金で備える方法もあります。
貯蓄を進めるだけでなく、運用益が非課税になるつみたてNISAを取り入れて、資産を増やすことを検討するのもいいですね。
長く働くために、スキルや健康を保つことも重要です。老後への備えは、何も預貯金だけが全てではありません。
さまざまな面から考えて、情報収集してみてくださいね。
参考資料
太田 彩子
