春一番の便りが届き始め、心浮き立つ季節となりましたね。一方で、3月は年度末。4月からの新年度に向けて「仕事を増やすべきか、セーブすべきか」と、働き方を再検討されているシニア世代の方も多いのではないでしょうか。

少子高齢化が進む現代では、働く高齢者が年々増加しています。

特に最近は物価高により毎月の生活費がかさみやすいため、「定年後にも再就職やアルバイトなどの形で収入を得たい」と考える人も少なくないでしょう。

今回は、働くシニアの年金額に影響を与える「在職老齢年金制度」の改正内容について詳しく解説します。

年金を全額受け取れる収入の目安についても紹介するため、ぜひ参考にしてください。

1. 【在職老齢年金制度】概要と目的

そもそも「在職老齢年金制度」とは、働きながら厚生年金を受け取る高齢者の「賃金+厚生年金」が一定の基準額を超える場合、超えた金額の半分が厚生年金から減額される制度です。

当制度は、一定以上の収入がある高齢者の年金額の調整を通して、年金制度を支える側に回ってもらうことを目的としています。

調整されるのは厚生年金のみであり、給与や国民年金への影響はありません。

2. 【在職老齢年金制度】2026年4月からは基準額が「51万円→65万円」に引き上げ

在職老齢年金制度において、厚生年金が減額となる基準額は毎年見直されています。

2.1 2026年4月からは基準額が「65万円」に

2026年4月以降は基準額が51万円から65万円へと引き上げられるため、毎月の「賃金+厚生年金」の合計額が65万円以内であれば、年金を全額受け取ることが可能です。

2.2 基準額引き上げの背景

在職老齢年金制度の基準額引き上げの主な理由は、日本の平均余命・健康寿命の延伸です。

65歳以上の在職老齢年金制度の状況3/5

65歳以上の在職老齢年金制度の状況

出所:厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」

「長生きリスクに備えて元気なうちは働きたい」という高齢者は年々増加しており、2025年時点の65〜69歳の就業率は54.5%にものぼります。

また、人材確保や技術継承の観点から、高齢者の活躍を求める世の中のニーズも高まっています。

一方で、年金を受給しながら働く場合、年金額が減らないよう勤務時間を調整したいと考える人が多いのも事実です。

今回の制度改正によって「働き損」のイメージが薄れ、高齢者が労働意欲を持って柔軟に働ける環境に近づきます。

「働きたい人が働きやすい仕組み」を確立することで高齢者の活躍を後押しできるほか、シニア世代の収入と生活の安定にも寄与します。

3. 【在職老齢年金制度】改正前・改正後を比較!受け取れる年金額はどれだけ変わる?

ここからは、在職老齢年金制度の改正前・改正後を比較して、受け取れる年金額にどの程度違いが出るのかを確認してみましょう。

賃金や年金額などの条件は、以下のケースを想定して計算します。

  • 賃金の月額:46万円(賞与を含む年収の1/12)
  • 本来受け取れる厚生年金月額:全額で10万円
  • 賃金と厚生年金の合計:56万円

在職老齢年金制度の改正前・改正後の厚生年金支給額の違いは、以下のとおりです。

改正前(2026年3月まで)

  • 基準額:51万円
  • 賃金と年金額の合計(56万円)が基準額を5万円上回る
  • 厚生年金は基準額を超えた5万円の半額(2万5000円)が支給停止

→厚生年金の支給額は7万5000円

改正後(2026年4月から)

  • 基準額:65万円
  • 賃金と年金額の合計(56万円)が基準額65万円を下回る

→厚生年金の支給額は全額の10万円

この場合、今回の基準額引き上げによって厚生年金を全額受け取れるようになり、支給額は2万5000円アップします。

1年間では厚生年金が30万円増えることになるため、家計のゆとりが広がるでしょう。

4. 【在職老齢年金制度】ご自身が受け取れる年金額をチェックしよう

年金受給者の中で現在働いている人や今後働く予定がある人は、在職老齢年金制度の改正により、受け取れる年金額にどのような変化があるのかを把握しておくことが重要です。

ここでは、日本年金機構の「在職老齢年金早見表」を紹介します。

在職老齢年金早見表5/5

在職老齢年金早見表

出所:日本年金機構「在職老齢年金早見表」

制度改正後の2026年4月以降に厚生年金を全額受給できるのは、表の青色部分に該当する人です。

たとえば本来の厚生年金月額が10万円の人は、賃金の月額が55万円までであれば厚生年金を全額受け取れます。

5. おわりに

在職老齢年金制度は、一定以上の収入がある年金受給者の年金支給額を調整する仕組みです。

働いて得た賃金と厚生年金の合計が基準額を超えた場合、超えた分の半額が支給停止となります。

2026年4月からは基準額が51万円から65万円へと引き上げられることで、働きながら年金を全額受給できる高齢者の範囲が広がります。

今回の改正は、「給与も年金も受け取りながら現役として働きたい」と考える高齢者を後押しするものといえるでしょう。

まずは改正内容を正しく理解したうえで、ご自身の収入状況や厚生年金額と照らし合わせながら、それぞれに合った働き方と収入設計を検討することが重要です。

制度をうまく活用し、将来の安心につなげていきましょう。

参考資料

池田 夕華