3. 夫婦が知るべき「繰り下げ受給」の注意点とは
夫婦の場合、「繰り下げ受給」を行う注意点として加給年金というものがあります。
加給年金は厚生年金の被保険者が65歳に到達した時点で、被保険者が扶養する子供や配偶者がいる場合に支給される年金のことです。
「年金における家族手当」とイメージされると良いでしょう。扶養家族がいる場合は通常の老齢厚生年金にプラスして支給されるので、定年退職を迎えて収入が減ったときの生活費などを補うことが考えられますね。
なお、加給年金は「厚生年金」について適用されるものなので、会社員や公務員などの第2号被保険者しか受け取ることができず、自営業者など厚生年金に入っていない場合は対象外となります。
加入年金の要件を満たす場合、1年あたり22万3800円(生年月日に応じて加算あり)が年金に加算されます。
仮に夫婦の年の差が5歳差で、夫が65歳で年金受け取りを開始した場合、妻が60歳から65歳になるまでの5年分の約112万円が、加給年金として受け取れることになります。
一方、夫が繰り下げ受給を行い、70歳から年金受け取り開始する場合には、この加給年金は受け取れないことになります。
年金を繰り下げ受給する場合には、増額率だけでなく、加給年金の要件なども確認してから行いましょう。
その他、年金が増えるということは、これにかかる税金や保険料(健康保険料や介護保険料)も高くなる場合があります。引かれる金額が大きくなるため、額面のように手取りも増えるとは限らないのです。
制度を利用する際は、メリットだけでなくデメリットも知ったうえでご家族に合う選択肢を見つけていきましょう。
執筆者
ファイナンシャルアドバイザー/1級FP技能士/宅地建物取引士
龍谷大学経済学部を卒業後、三菱UFJ信託銀行株式会社に入社。おもに富裕層顧客向けに、投資信託、生命保険を活用した資産運用の提案、資産承継に関するコンサルティング営業に従事する。豊富な金融知識を活かし同社のトップテラーとして活躍、1000世帯以上の資産運用に関する相談業務経験をもつ。現在は個人向け資産運用のサポート業務をおこなう。顧客の潜在的なニーズを汲んで、最良の方法を提案することが強み。1級FP技能士、宅地建物取引士、一種外務員資格を保有。
監修者
株式会社ナビゲータープラットフォーム メディア編集本部
LIMO編集部記者/編集者/元公務員
京都教育大学卒業。くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」のLIMO編集部で、厚生労働省管轄の公的年金制度や貯蓄、社会保障、退職金など、金融の情報を中心に執筆中。大学卒業後は教育関連企業での営業職を経て、2010年に地方自治体の公務員として入職。「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」「福祉医療」等の業務に従事した。主に国民健康保険料の賦課、保険料徴収、高額療養費制度などの給付、国民年金や国民健康保険への資格切り替え、補助金申請等の業務を担う。特に退職に伴う年金や保険の切り替えでは、手続きがもれることで不利益を被ることがないよう丁寧な窓口対応を心がけた。その後、保険代理店にてマーケティング業務に従事。保険料比較サイトの立ち上げに参加した。乗合保険会社の商品ページだけでなく、保険の知識を普及するためのページ作成にも参加。小学校教諭一種免許、幼稚園教諭一種免許、特別支援学校一種免許取得。
はたらく世代のお金の診断・相談サービスを行うマネイロでは、「【計算例付】厚生年金保険料はどのように決まる?ケース別算出方法や受給額を解説」など、お金や年金制度にまつわる記事を発信中。京都府出身。(2024年3月18日更新)