2017年、最も革新的な日本の成長企業はエムスリーに

世界的な経済紙であるフォーブス(Forbes)は、「Innovation Premium」とよばれる独自の指標により算出された「Most Innovative Growth Companies(最も革新的な成長企業)」を毎年公表しています。その2017年版ランキングで日本企業のトップになったのがエムスリー(世界全体では5位)。

このエムスリーとはどのような会社なのか、今回は簡潔に解説を試みたいと思います。

そもそもエムスリーとはどのような会社か?

エムスリーの事業の中心は、医療関係者向けにインターネットで情報を提供するプラットフォーム「m3.com」にあります。

従来、医師への最新医療情報や医薬品情報の提供は、MR(メディカル・リプレゼンタティブ)と呼ばれる製薬会社の営業員が行っていました。それが同社のサイト上で、「MR君」というサービス名称で行われています。「MR君」を利用する製薬会社からの広告収入や販売手数料が同社の収益源となります。

製薬会社から見た場合、MRのコストを削減できることや、多忙な医師に対して効率的にアプローチできることが大きな魅力です。そのことが評価されたため、2000年代初頭にサービスを開始して以来、急成長を遂げ、現在も成長が続いています。

MR君に加え、同社が成長のために取り組んできたのが、m3.comを活用して人材紹介業、治験、診療サービスなどを行うプラットフォーム派生事業(以下、PF派生)と日本での成功モデルの海外展開です。

10年前の2007年3月期時点での売上構成比は、MR君関連が約73%と大半を占めていましたが、2017年3月期には17%にまで低下しています。一方、PF派生は17%から57%へ、海外は10%から24%と、MR君ファミリー以外の存在感が高まっています。

エムスリーのどこがすごいのか?

エムスリーは、株式市場では成長企業として一目置かれる存在です。その理由は以下の3点にまとめることができます。

第1の理由は、業績や株価が右肩上がりの成長を遂げてきたためです。同社の創業は2000年9月、上場は2004年9月ですが、上場初年度の2005年3月期に比べると2017年3月期の売上高は約34倍、営業利益は約28倍に拡大しており、連続して増収、増益を維持しています。また、この13年間の平均成長率(CAGR)は、売上高で34%、営業利益で32%に達しています。

株価および時価総額も急拡大しています。2004年9月の上場初日と比べ、株価は約16倍に上昇。また、直近の時価総額は約1兆円と、大企業並みの時価総額になっています。

こうして見ると、上場してから業績や株価が伸び悩む、いわゆる「上場ゴール」となってしまう企業とは対照的な動きになっていることがおわかりいただけると思います。

第2の理由は、採算性と資本効率の高さです。過去3年間の営業利益率は30%強、一方、ROEは30%弱を維持しています。成長のための人材投資やM&Aを行いながら、こうした高い水準を維持していることが注目されています。

第3はネット企業でスタートしながら、M&Aを通して参入した「治験」などのリアルな事業でも成功を収めていることです。

新規医薬品の承認を得るためなどに行われる臨床試験では、人件費などの固定費負担が高まるリスクがありますが、一方で、同社のインターネットプラットフォームを活用してシナジーを生みだすことができれば高いリターンを得ることも可能です。

同社は、そうした難易度が高い取り組みにもチャレンジし、その成果を享受していることも大きな注目を集めています。

今後の注目点

2017年4月25日に行われた決算説明会では、既存事業のさらなる深堀りや海外展開の加速に加え、よりいっそうM&Aに注力する考えが示されています。

また、M&Aの案件発掘や実行から買収後の統合作業までを自社で完結可能な、投資銀行、コンサル、ベンチャーキャピタルなどの出身者から成る約10人のプロフェショナルチームを内部に持ち、活用していく考えも明らかにされています。

中期的な業績の成長ポテンシャルに加え、成功確率が高くはないとされるM&Aの世界で常勝を続け、今後も革新的なビジネスを生み出し続けられるかを大いに注目したいと思います。

エムスリーの過去10年間の株価推移1/1

エムスリーの過去10年間の株価推移

 

和泉 美治