欧州株が続騰した1週間
先週(2017年5月1日-5日)の世界の株式市場は、欧州株が続伸する一方で上海株が続落するまちまちの展開になりました。主要市場の週間騰落率は、現地通貨ベースで独DAXが+2.2%、TOPIXが+1.2%、米S&P500が+0.6%、上海総合が▲1.6%でした。
先週の最大の注目は株高が進んだ欧州市場です。
市場参加者の関心が、フランス大統領選にかかわる政治リスクから、回復を続ける欧州経済に向かったと理解できます。リスク回避の局面で選好される金価格とドイツ国債がともに価格を下げる一方で、ユーロが対米ドルをはじめ全面高となり、欧州株が騰勢を続けました。ユーロ圏の1-3月のGDP成長率が前期比+0.5%増となり、低金利が続くなかで持続的に景気が回復している経済環境に投資機会を見出しているのでしょう。この結果、独DAXは最高値を再更新、仏CAC40も週間で+3.1%上昇して2015年4月の高値を上回ってきました。
これに対して米国の株式市場は穏やかな株価上昇となり、テクノロジー頼みの展開になりました。
連邦公開市場委員会(FOMC)の決定と4月の雇用統計を受けて、6月に米連邦準備制度理事会(FRB)が追加利上げを実施するという観測が強まり、米ドルは対ユーロなど一部の通貨を除いて上昇しました。さらにオバマケア代替案が米下院を漸く通過しトランプ政権の経済政策に再び注目が戻って不思議はない地合いになりました。S&P500とナスダック総合指数は終値ベースで最高値を更新し、NYダウも2万1千ドル台を回復していますが、週間騰落率を見るとNYダウは+0.3%にとどまり、市場の関心は+0.9%上昇したナスダック総合に向かっています。個別に見ても、アップル(AAPL)が+4%、ネットフリックス(NFLX)が+3%、アルファベット(GOOG)が+2%などテクノロジー株が牽引していることがわかります。
アウトルック:仏大統領選の結果待ち。欧州株とテクノロジー株がリードを続けそう
今週(2017年5月8日-12日)は、フランス大統領選の結果待ちになりますが、市場の期待通りにマクロン氏勝利となれば、この2週間の流れが続き、欧州株と米国テクノロジー株が相場を牽引すると考えます。
欧州株にとって、景気の拡大が続き金融緩和の終わりの始まりを感じさせるデータがあれば援軍になります。今週発表されるドイツの1-3月GDP、3月の鉱工業生産、4月の消費者物価指数(CPI)、3月のユーロ圏鉱工業生産指数の動向が注目です。
米国では6月の追加利上げが濃厚となりました。市場の関心はその次の利上げの時期に移っていくでしょう。今週発表予定の4月の生産者物価指数(PPI)、消費者物価指数(CPI)、小売売上高がその手がかりになるかもしれません。トランプ政権の経済政策が進捗するかどうかも、テクノロジー以外の牽引役を探すうえで重要になると思います。
ルペン氏が仏大統領に就任する場合、通貨を含めてFrexitをするのかが焦点になりますが、現時点では判然としません。消化が難しい展開になりそうです。また続落基調にある上海株には注意が怠れません。
日本株は決算のピークを迎えますが、米国の通商政策と為替相場の行方に気をもみそうです。週後半のG7財務相・中央銀行総裁会議の討議内容が重要になるでしょう。
椎名 則夫