3. ヤドカリ投資のメリット
ヤドカリ投資は自宅を活用して投資を行うため、賃貸用の物件を購入する不動産投資とは異なるメリットがあります。
どのような違いがあるのか見ていきましょう。
3.1 住宅ローンが利用できるため、低金利
投資用物件の購入に住宅ローンは利用できませんが、ヤドカリ投資で購入するのは自分が住む家のため、住宅ローンが利用できます。
住宅ローンを利用する最大のメリットは、不動産投資ローン(アパートローン)よりも低い金利で借り入れができることでしょう。
住宅は生活に必要不可欠なものであり、できるだけ多くの属性の人がマイホームを取得することができるよう、金利面で大きく優遇されています。
金融機関や属性によって融資条件は異なりますが、年利1%以上の差が出ることも多いため、返済総額では大きな差が出るといえるでしょう。
3.2 融資審査基準が比較的やさしい
住宅ローンは自己居住用住宅の取得を目的としたローンのため、不動産投資ローンとは審査基準が異なります。
不動産投資ローンに比べ、住宅ローンの方が比較的やさしい審査基準で融資を受けることが可能でしょう。
不動産投資ローンは、個人の属性とともに物件の担保評価も審査の対象となりますが、求められる個人属性は住宅ローンよりも高いことが一般的です。
これは、万が一不動産経営が上手くいかなかった場合の補填を想定しているためです。条件として、具体的に年収700万円以上を条件と明記している金融機関もあります。
実際に不動産投資を始められる人は限られてしまうのが現状といえるでしょう。
一方、住宅ローンは一般的に安定した年収があれば融資を受けられます。
例えばフラット35であれば、返済比率(年収に占める年間合計返済額の割合)が年収400万円未満では30%以下、年収400万円以上では35%以下の条件を満たす範囲で融資が可能です。
また不動産投資ローンでは、融資額は物件購入金額、もしくは物件評価額の80~90%とする金融機関が多く、つまり2~3割程度の自己資金が必要とされることが多いです。
しかし住宅ローンでは、条件によってはフルローンを組むことができる可能性があります。
自己資金が限られている場合でも、住宅ローンが使えるヤドカリ投資なら不動産投資に取り組むことができる可能性が高まるでしょう。
3.3 空室リスクがない
投資用に賃貸物件を購入した場合、空室が発生すると収益が減少し、赤字となった場合はローン返済用のお金を自己資金から捻出しなければなりません。
そのため、空室は不動産投資最大のリスクと言われており、いかに空室期間を作らないかが重要になります。
しかし、投資対象が自宅であるヤドカリ投資では、自分自身でローン返済を行っていくだけのことですので、そもそも空室という概念がありません。
住み替えした後、1件目の物件を賃貸に出す場合は、もちろん空室リスクを考慮しなければなりません。
しかし、売却を繰り返すヤドカリ投資を狙う場合は、空室リスクを気にする必要はないといえるでしょう。
3.4 家賃を住宅ローンに充て、資産形成できる
自宅が賃貸物件の場合、必ず家賃の支払いが発生します。しかし、家賃をいくら払い続けても物件は自分のものにはならず、家賃は結果として掛け捨て状態にあるといえるでしょう。
一方、物件を購入すればローンの返済が必要になりますが、ローンを完済してしまえば手元に不動産が残り、資産となります。
つまり、今まで支払っていた家賃分を住宅ローン返済に充てていると捉えれば、完済後に投資用の資産を手に入れることができるのです。
3.5 ライフスタイルに合わせて住居を変更できる
マイホームに求められる条件は、ライフステージによって変化します。結婚し子供が増えれば子供用の部屋が必要になりますし、子供が独立した年代になると夫婦二人の生活を重視した環境が必要になるでしょう。
通常なら必要に応じたリフォームで対応することになりますが、ヤドカリ投資であれば住み替えのタイミングで現在のライフスタイルに適した家に住み替えることができます。
また、頻繁に転居が必要な転勤族の方も投資に取り組みやすいでしょう。
3.6 住宅ローン控除が利用できる可能性
ヤドカリ投資では、物件購入にあたり住宅ローンを使用するため、条件を満たせば住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の対象となります。
ただし、床面積40m2未満(※)の物件は住宅ローン特別控除の対象とならないことに注意しましょう。一般的な不動産投資でよくあるワンルームマンションなどへの投資は、ヤドカリ投資のメリットを薄めてしまう可能性があります。
(※2021年度の税制改正により、これまでの床面積要件50m2以上から、40m2以上に変更となりました。)
3.7 3000万円特別控除の特例が受けられる
自宅を売却し利益が出た場合、所有していた期間にかかわらず、3000万円まで「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」を受けられます。これは収益物件にはない優遇で、ヤドカリ投資の大きなメリットです。
ただし2020年度の税制改正により、3000万円特別控除と先述した住宅ローン控除は併用することができなくなりました。
どちらの控除が有利になるかは、売却益や所得状況などによって異なります。よくシミュレーションを行って選択しましょう。
3000万円特別控除の条件や注意点については、次の見出しで詳しく解説します。