一連の東芝問題で改めて関心が高まる原発事業

昨年末以降、その行方が最も注目されている企業が東芝(6502)です。事の発端は、2年前に明らかとなった不正会計問題ですが、それに拍車をかけたのが原子力発電事業の巨額損失問題でした。半導体部門などを分社化し、大リストラを敢行する見込みなど、東芝の再生はまだ始まったばかりです。

しかし、一連の問題が深刻化した中で、2017年は原発事業に対する関心と懸念が改めて高まっているのではないでしょうか。

福島第一原発事故以降、安全性への懸念が広まる

原発事業には功罪両面があります。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災による「福島第一原発事故」以来、人々の注目がその安全性に大きくシフトしていることは間違いありません。正しいかどうかは別として、“原発=危険、恐ろしい”というイメージが広まってしまったことは事実でしょう。

その意味でも、3月11日の大震災は、炉心融解(メルトダウン)が起きた福島第一原発事故(注1)と共に、永遠に人々の記憶に残るでしょう(注1:原発事故の発生は3月11日としています)。

4月26日は史上最悪の原発事故が起きた忌まわしい日

しかし、福島第一原発事故が起きる前まで、いや、起きた後の現在でも、世界最悪の原発事故と言われるのは1986年4月26日に発生した「チェルノブイリ原発事故」です。

欧州を始めとする世界各地では今でも、毎年4月26日を『リメンバー・チェルノブイリ・デー』として、大規模な各種イベント(反原発デモ、シンポジウム、追悼集会など)が行われています。

特に、発生30年の節目となった昨年(2016年)は、各地で大規模な記念集会が開催されました。欧州地域の人々にとって、4月26日は過去の忌わしき原発事故と向き合う重要な日なのです。

では、31年前に起きたチェルノブイリ原発事故はどのような事故だったのでしょうか?

レベル7の原発事故は福島とチェルノブイリの2件だけ

世界の歴史上、炉心融解を伴う原発事故はスリーマイル島原発事故(1979年)、チェルノブイリ原発事故(1986年)、福島第一原発事故(2011年)の3回しかありません。

ちなみに、チェルノブイリ原発事故後の1992年に制定されたINES(国際原子力事象評価尺度)に基づくレベル1~7で判断すると、チェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故が最上位のレベル7(深刻な事故)とされています。

チェルノブイリ原発事故の被害は福島を大きく上回る

そのチェルノブイリ原発事故は、当時のソビエト連邦(現在のウクライナ)で起きました。この原発事故の大きな特徴は、1)炉心融解が発生した爆発火災事故であったこと、2)ソ連という社会主義国家で起きたため、今なお詳細がベールに覆われている部分が多い、等になります。

福島第一原発事故はメルトダウンを伴い、水素爆発が発生しましたが、爆発火災は起きていません。これだけでもチェルノブイリ事故の深刻さが伺えます。

また、ソ連の情報公開が進む前に起きた事故であり、その被害の大きさは今もなお様々な見解があり、一説には死者4,000人超という信頼性の高いものもあります(注2:異論もあり)。

チェルノブイリ原発事故以降に本格化した安全問題

確かなことは、想像を絶するような大事故であり、その後の国際的な原子力安全問題の議論に繋がったことです。このような仮定の話は不謹慎かもしれませんが、もし、チェルノブイリ原発事故が起きていなければ、その後に発生した数多くの原発事故(レベル3~7、レベル7は福島のみ)での対応や情報公開が後手に回っていた恐れがあると考えられます。

九州電力の玄海原子力発電所が再稼働へ

折しも、日本国内では、その『リメンバー・チェルノブイリ・デー』を前にした4月24日、九州電力(9508)の玄海原子力発電所3、4号機(佐賀県)の再稼働に関し、佐賀県知事の同意が正式表明され、今秋の再稼働が確実視されることになりました。

原発の再稼働には賛成・反対それぞれの意見があると思われますが、再稼働の前に、日本で起きた福島第一原発事故を上回っていたと見られるチェルノブイリ原発事故の悲惨さをもう一度振り返ってみる必要があるでしょう。

参考:九州電力の過去10年間の株価推移

LIMO編集部