3. 不動産投資と損益通算に関する注意点

ここでは、不動産投資と損益通算に関する注意点について解説します。損益通算についてきちんと理解するためにも、注意点をしっかりと把握しておきましょう。

3.1 不動産所得が赤字の場合、融資に影響が出る場合も

不動産所得が赤字である場合、収益性が低いとみなされてしまい金融機関からの評価が悪くなるケースがあります。そのため、融資審査に通らなかったり、希望する金額の借り入れができなかったりする可能性が考えられるのです。

ただし、キャッシュフローは黒字で「帳簿上は赤字」というケースであれば特に問題とならないことも。あくまで減価償却による赤字であり、融資に関しては現実的な返済能力から判断されることもあるからです。とはいえ、新たに物件購入を考えている方は、赤字計上に関して慎重に考えることをおすすめします。

3.2 赤字の場合は土地にかかる借入金利子が損益通算の対象外に

不動産投資では、金融機関などから借り入れをして物件を購入するケースが多いでしょう。通常、借入金にかかる利子は経費として計上することができます。

しかし、不動産所得が赤字になる場合、「土地の取得に要した借入金利子」は損益通算が認められません。そのため、特に土地から取得して不動産投資を行っている場合、条件によってはそれほど節税につながらない可能性も考えられるでしょう。

ただし、不動産所得の赤字が土地にかかる借入金利子よりも小さい場合は、超過分のみ経費計上が可能です。ご自身のケースに当てはまるかなどさらに詳しく知りたい方は、管轄の税務署や税理士などに相談してください。

3.3 国外中古不動産は損益通算できなくなった

令和3年以後、国外中古不動産からの不動産所得が赤字になる場合でも、国内の不動産から生じた不動産所得や給与所得など他の所得と損益通算することができなくなりました。

国外中古不動産は物件価格に対して建物価格の割合が大きいことが多いため、その分減価償却費も多額になりやすい傾向にあります。そのため、国外中古不動産を購入して減価償却から不動産所得を赤字にして、他の所得と損益通算することにより節税していた人もいたのです。

これまで解説したように、国内の不動産に関しては他の所得との損益通算が可能です。今後損益通算による節税を意識する場合は、国内不動産の購入を検討するとよいでしょう。

3.4 所得が少なすぎると他の控除による恩恵を受けにくくなる

実際に支払う所得税の金額は、損益通算によって計算された所得金額の合計から各種控除を差し引いて確定されます。したがって、損益通算で所得が少なくなりすぎると、他の控除による恩恵を受けにくくなるデメリットがあるのです。

多額の社会保険料や医療費、寄付金などを支払っていたとしても、所得がなければ控除しきれません。住宅ローン控除に関しても、課税対象となる所得が少なすぎると控除しきれず、あまりメリットを享受できなくなってしまいます。

不動産投資による節税を考える場合は、ご自身の状況に合わせてしっかりとシミュレーションをした上で物件購入を検討すべきだといえるでしょう。