きな臭くなってきた世界情勢と株安
日経平均は過去1か月間で約▲1,300円(約6%)下落しており、軟調な展開が続いています。こうした展開の背景には、以下の記事で指摘されている通り、主に次のような政治的な要因が大きく影響しています。
- トランプ期待がトランプ不安に転換
- 東アジアの地政学リスク高まる(北朝鮮の暴走、米中関係悪化)
- 中東の地政学リスク高まる(米シリア攻撃でシリア和平遠のく、米ロ関係悪化)
- 欧州政治不安(4-5月仏大統領選で「反EU」「フランス第一」を掲げる国民戦線ルペン党首が当選に近づく懸念)
- 日本の政治混迷(森友学園問題)
一言でいえば「世界全体がきな臭くなってきた」という単純で誰にもわかりやすい理由であるということになりますが、世界景気そのものはまだ大きく悪化する兆候が見られないことには留意したいと思います。
出所:北朝鮮・シリア不安で円高 どうなる日本株?(楽天証券)
思慮深い米金融当局
その世界景気に関して、最も頼りにできそうなのは堅調な米国経済です。また、金融当局、つまり米連邦準備理事会(FRB)の最近の動きを見ても、そこにはまだ相応の信頼を置くことができるのではないかとも考えられます。
ちなみに、FRBは年内に資産規模の縮小を行うことを決定していますが、それを行うにあたり「慎重なスタンスで臨む」ことが、最近の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(3月14~15日開催分)で述べられています。
また、以下の記事でも指摘されているように、“縮小ありき”でなし崩し的にバランスシートの縮小を実行するのではなく、市場と緊密にコミュニケーションを取りながら実行していくというスタンスも心強いポイントです
さらに、緩和から引締めへと舵を切るのは、FRBのメンバーが米国景気の回復に対して自信があるからだという解釈が成り立つことにも注目したいと思います。
このため、最近のFRBによる年内の資産縮小の決定を、過度に悲観的にとらえる必要はないと考えられます。
出所:FRBの資産規模縮小が与える影響:市場の転換点になるのか?(投信1)
米国は企業業績も好調
次に、米国企業の業績動向についても確認してみましょう。これから1-3月期の決算発表が本格化しますが、この記事によると、S&P500構成銘柄の市場コンセンサス予想は2013年10-12月期以来の高い伸びが予想されているとのことです。
また、セクター別では全11業種中8業種が増益、3業種が減益と予想されており、特に好調なのはエネルギーや金融です。
もちろん、バリュエーションにやや割高感が現れていることには注意が必要ですが、こうした企業業績の好調が続くのであれば、景気の大崩れはないのではないかと考えられます。特に、最近のドル安(円高)は米国の株式市場にとっては追い風になることが期待されます。
出所:米1-3月期企業決算直前レビュー、5年半ぶりの高い伸びが予想される背景は?(投信1)
米国経済に死角はないのか
これまで米国経済は堅調であるという見方をサポートする見解を述べてきましたが、もちろん、死角や気がかりな材料が全くないということではありません。
以下の記事で述べられているように、米新車販売が3カ月連続前年割れとなり、自動車版サブプライム問題への懸念が再燃していることや、天候要因を考慮しても雇用の伸びにやや減速感が見られることには注意したいと思います。
出所:雲行きの怪しい米経済、自動車版サブプライム問題への懸念も(投信1)
LIMO編集部