専業主婦が厚生年金に入るとどうなるか
例として、これまで会社員の妻として社会保険料の支払いがなかった人が社会保険に加入した場合のメリット・デメリットを見てみましょう。
<Bさんの例>
Bさん(45歳)東京都在住、月収10万円(ボーナスなし)、協会けんぽに加入
社会保険料の負担(2022年6月時点)
- 健康保険料(介護保険料含む):5611円
- 厚生年金保険料:8967円
- 雇用保険料:300円
社会保険料合計:1万4878円
年間:17万8536円
年金の増額
- 1年間働いた場合:6577円×終身
- 10年間働いた場合:6万5772円×終身
- 20年間働いた場合:13万1544円×終身
仮にこのBさんが10年間働いた場合を見てみましょう。10年間の社会保険料の合計は178万5360円です。これに対し、年金は6万5772円増額となるので、65歳から92歳まで年金を受け取ると、増額分は177万5844円となり、支払った保険料とほぼ同じくらいになります。これ以上長生きしてようやく得をする計算です。
ただし、この計算には健康保険料や雇用保険料も入れているので、こちらのメリットも見ないわけにはいきません。
傷病手当金・出産手当金がもらえる
健康保険には、被保険者が病気やケガで仕事を休んだ時に受け取ることができる「傷病手当金」と、被保険者が出産のために仕事を休んだ時に受け取ることができる「出産手当金」があります。国民健康保険の場合は、これらは任意給付となっており、現状ほとんどの市区町村では実施していません。
失業保険がもらえる
1年以上勤めて離職した場合に失業手当を受け取ることができます。年齢や離職理由、加入期間によって受け取れる手当の日数が異なります。解雇や雇止めの場合は、離職日前の1年間に6ヶ月以上の加入期間があれば支給を受けることができます。
障害厚生年金がもらえる
障害基礎年金は障害等級が1級か2級に該当しないと受給できませんが、障害厚生年金は1、2級よりも軽い3級でも受給できます。さらに3級よりも軽い一定の障害に該当する場合は障害手当金が支給されます。
年金だけでなく老後資金も作れる
このように、社会保険料を納めることで、年金の増額だけでなくいくつものメリットを得られます。そもそも長く働けばスキルが上がるなどして、月収10万円から給与も上がっていく場合もあるでしょう。
保険料に囚われず、収入アップを目指していけば、年金が増えるだけでなく貯蓄も増やすことができます。老後の経済的な不安をなくすためには、年金と貯蓄の両方で生活基盤を作っていくことが大事です。
目先の損得だけでなく、長いスパンで得られるものは何かを考えてみるといいのではないでしょうか。
参考資料
- 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました|厚生労働省
- 平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大) |厚生労働省
- 令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構
- 厚生年金保険の保険料|日本年金機構
石倉 博子