5. ダメな投資信託の例

さて、ここでは、手を出してはいけない投資信託の特徴をリストアップしていきます。

5.1 (ケース1)保有銘柄数が多い投信

通常は企業調査やバリュエーション(株価評価)を行うアナリストがファンドマネージャーに銘柄推奨をして、最終的にファンドのリスク管理しているファンドマネージャーが投資判断を行い、組み入れる銘柄を決定します。

したがって、投資信託に組み入れられている銘柄は「これぞ!」という銘柄が入っているはずなんです。

ところが、ポートフォリオに100銘柄も200銘柄も入っている投資信託をよく目にします。日経225でも225銘柄ですよ。なぜそんなに銘柄数が必要なのでしょうか。

一つには、ポートフォリオマネージャーが投資判断に自信がないために、結果としてあれもこれもとポートフォリオに組み込んでしまうということがあります。

もっとも後で述べるように純資産が大きくなりすぎて、流動性などを考慮すると銘柄数を増やしながら流動性を確保して運用せざる得ないケースがあります。

こうした傾向を嫌って、保有銘柄数を制限する投資信託も海外などにはあります。これはファンドマネージャーの行動を考慮して制限を加える投資信託というわけです。

5.2 (ケース2)保有銘柄上位がベンチマークとほとんど一緒

日本株の大型株アクティブファンドに見られるダメな投資信託に見られるのが、上位の保有銘柄がTOPIXなどの時価総額が大きな銘柄の顔ぶれとほとんど変わらない投資信託です。

皆さんもご自身が保有する投資信託のトップ10を見てみてください。トヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソフトバンク…こうした銘柄が並んでいないでしょうか。

こうした時価総額の大きな銘柄を組み入れられるべきではないとは言っていません。

ただ、こうした銘柄であれば、ネット証券を活用すればすぐに投資できますし、あえて投資信託で持つべき銘柄という話ではありません。

もっとも、運用しているファンドマネージャーは、ベンチマークの比率に対してオーバーウェート(O/W)、アンダーウェート(U/W)、ひいてはセクターに対してO/W、U/Wの調整をしているので、結果としてベンチマークを意識した保有銘柄となってしまうのです。

そして、ベンチマークがある投資信託のファンドマネージャーのパフォーマンスの評価はベンチマークに対して行われるので、ベンチマークの銘柄ウェートを意識せざるを得ません。

ただ、それでも上位保有銘柄を見て顧客に「ベンチマークと同じじゃないか!」といわれないようにするため、期末に「イケてそうな中小型株」を購入し、「ちゃんとボトムアップで面白い銘柄を入れていますよ」と見せるような工夫もしているケースもあります。これを「ウィンドウドレッシング」と業界ではよんでいます。

5.3 (ケース3)1年と3年でパフォーマンスがベンチマークに負けている

外資系運用会社であれば、1年と3年のパフォーマンスが負けていれば、多くのケースではクビのリストに入ります。

さすがに1年で負けても注意程度ですが、1年と3年がマイナスで並んでしまうとかなりジョブセキュリティは危なくなります。いわゆるイエローカードです。そして1、3、5年でマイナスとなるとレッドカードです。

したがって、1及び3年で負けているようですとファンドの運用者が将来も同じ可能性が低くなります。そこで一旦自分が期待していた運用がされなくなるという可能性も踏まえて考えておくのが良いでしょう。

日本ではあまりファンドマネージャーにフォーカスが当たらないので、あまり議論にはなりにくいのですが、海外では「トランジション(引継ぎ)」といってファンドマネージャーの引継ぎなどをしっかりケアした運用会社が評価をされます。

運用哲学が維持されるのか、後任の運用者のスタイルはどうなのか、実績がある人物なのか、など様々な観点からのチェックやツッコミが入ります。

アクティブ運用においては特に「誰が運用してくれるのか」というところがカギでして、スーパーなファンドマネージャーが引退したあとの後任はどうするのかは常に議論の的です。

5.4 (ケース4)純資産(AUM)が大きすぎるファンド

個人投資家からすると「運用資産が大きいと安心」みたいな感覚もありますが、運用者からすると全く逆です。

いわゆる「大きすぎて動けない」という状況に陥ります。売買でいうと「自分で買い上げて、自分で売り下げる」という状況も発生しますし、どんなに面白い小型株があっても、流動性を考えると手を出しにくいということもあります。

たとえば、運用資産(Asset Under Management, AUM)が5000億円のファンドがあったとしましょう。このファンドで、時価総額が500億円の勢いのある新興企業に投資をしたいとします。

このファンドでそこそこインパクトある比率をまず議論しないといけませんが、仮にこのファンドで50銘柄を保有していたとすると1銘柄当たりの金額は100億円です。また、100銘柄を保有していたとすると1銘柄当たりの金額は50億円となります。

仮に50億円程度、つまりはファンドの1%はないとポートフォリオにインパクトがないとしましょう。その時には、会社の時価総額が500奥園であれば、会社の発行済株式数の10%を保有しないといけなくなります。本当に買い付ければこの時点で大量保有報告書を提出しなければならないレベルです。

また、このような銘柄は流動性を気にしなければなりませんので、いきなり10%のポジションも作れませんし、会社の様子がおかしくなったら売却をしないといけないことを考えると、簡単に手が出ないことがお分りでしょう。

つまり、大きいことは良いことではありません。

5.5(ケース5)機能やテーマをテーマ性に求めるファンド

相変わらず、「毎月分配型」といった機能やテーマを売り文句とした「XXXファンド」が存在しますが、これらは投資家のニーズを満たしているので売れるということはあるのですが、最終的に投資家にリターンを提供できているのかは疑問が残ります。

まあ、「機能やテーマに訴えかけるのが商売の基本だ」といわれればそれまでなのですが、儲かった分を分配とし、バリュエーションを意識してテーマもえらぶというような工夫がされれば、文句もないですが、現時点ではそうなっていないので、本当に良いアクティブファンドとそうでないファンドの見極めが難しいというのが実際です。

ただ、付け加えておきたいのが、テーマといっても成長する産業、たとえばグローバルのテクノロジー産業というような切り口のセクターファンドという位置づけであれば、もっと様々な商品が出てきてもよいかなと思います。実は米国ではセクターファンドは一定のポジションを確立しています。