コロナ禍を経て、長く続いたデフレ経済が終わりを迎え、物価上昇が日常の話題となっています。物価の上昇に伴い、生活費の負担が増していると感じる方も多いのではないでしょうか。
2024年10月には、帝国データバンクが「食品主要195社」による価格改定動向調査を実施し、年内最大規模の2911品目もの食品の値上げが予定されていると報告しています。食費はどの家庭においても生活費の大部分を占めるため、特に65歳以上の年金生活世帯にとって、限られた年金収入の中でやりくりすることが一層の課題になっているでしょう。
また、現在年金を受け取っていない現役世代にとっても、将来の物価上昇や年金の受給額がどれほどになるのかは気になるところです。
では、すでに年金を受給しているシニア世代の家計収支はどのような状況にあるのでしょうか。本記事では、65歳以上の無職世帯における貯蓄事情や家計収支について確認していきます。
1. 65歳以上・無職夫婦の「平均貯蓄額」はどのくらい?
総務省統計局が公表するデータによると、2023年度における、65歳以上・無職夫婦世帯の平均貯蓄額は2504万円です。
「老後2000万円問題」が提唱される中、貯蓄額2000万円を超えているなら十分だと思う方もいるでしょう。とはいえ、年金額や老後の生活費などについて考えると、意外と余裕がないように感じられる方も多いのではないでしょうか。
次に、平均貯蓄額が過去数年でどのように変化しているかについても見ていきましょう。
1.1 【65歳以上・無職夫婦】平均貯蓄額は年々増加傾向にあり
- 2018年:2233万円
- 2019年:2218万円
- 2020年:2292万円
- 2021年:2342万円
- 2022年:2359万円
- 2023年:2504万円
65歳以上・無職夫婦世帯の平均貯蓄額は、2020年までは2200万円台にとどまっていましたが、以降はじわじわと金額が伸び続け、2023年には2500万円を突破しています。
このように近年で平均貯蓄額が増えているのは、日本の少子高齢化による年金不安が影響しているのではないでしょうか。また、銀行預金だけに頼らず、投資信託などの金融商品を保有する方も増えてきています。
それでは、保有する資産の内訳についてもチェックしていきましょう。
1.2 【65歳以上・無職夫婦】保有資産の内訳は?
合計:2504万円
- 有価証券:480万円
- 生命保険など:413万円
- 定期性預貯金:846万円
- 通貨性預貯金:754万円
- 金融機関外:11万円
2023年度の保有資産合計額2504万円のうち、一番多い定期性預貯金は846万円ですが、前年と比較すると▲19万円減少しています。反対に、有価証券の金額は480万円と定期性預貯金よりも少ないものの、前年比+80万円と増額しています。
昨今ではNISAやiDeCoなど非課税で少額投資を行える制度も充実してきているため、老後資金を確保するために、預金だけでなく投資を活用する方も増えてきているのかもしれません。
ここまでは、無職夫婦世帯の貯蓄について確認してきましたが、次に「65歳以上でまだ働いている世帯」の貯蓄状況についても見ていきましょう。