財政赤字は子供たちに借金を残すもので、世代間不公平だと言う人がいますが、それはミスリーディングです(経済評論家 塚崎公義)。

財政赤字だけを考えずに遺産の事も考える必要

我々が払うべき税金を子供達に払わせるのが財政赤字だ、という点については、異論はありません。その部分だけを狭く捉えれば、たしかに世代間不公平でしょう。

しかし、子供たちの世代は我々世代から遺産を相続します。家計金融資産は2000兆円ありますから、政府の借金額より多い金額を相続するのです。それを使って増税分を払えば良いのですから、子供たちに文句を言われる筋合いはありません。

実際には、金融資産以外にも実物資産も相続されるわけですから、遺産額はさらに大きくなるはずです。

そして、極端な話をすれば、子供たちへの増税さえ不要かも知れません。数千年後には少子化で日本人が最後の一人となり、その人が死ぬと2000兆円と実物資産が国庫に入りますから、政府の借金は何の問題もなく返済できるのです。

これは極端な話ですし、実際に日本人が最後の一人になる事は考えにくいですが、論理的に物を考える際には、こうした極端な事例を考える事が役に立ちます。数千年後にすべての問題が解決している可能性がある、ということは、今の問題も突き詰めればそれほど深刻ではない、という事に気づくからです。

問題は、遺産が相続できる子と出来ない子の間に「世代内不公平」があることです。これについては、相続税を増税すべきだと筆者は考えています。たとえば相続税率を100%にすれば政府の借金問題は数十年で一気に解決します。そこまでしなくても、「配偶者と子がいない場合には、兄弟姉妹に相続させずに遺産は国庫に入れる」と決めるだけでも状況は大きく改善するでしょう。その点については別の機会に。