2021シーズン、大谷翔平選手は投打でMLBトップクラスの成績を残し、ア・リーグMVPに輝きました。シーズン前は二刀流の成功に懐疑的だった意見も、今となっては聞かれません。

躍進の裏側にはエンゼルス入団後、初めてケガをしなかった点が挙げられます。

大谷選手自身もシーズン終了後の会見で、「フィジカルの充実が結果に結びついた」と語っていました。大谷選手がどのような取り組みを行ったのかに迫ります。

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大谷選手「二刀流・筋肉強化策 その1」下半身のトレーニング

昨シーズンオフ、大谷選手は下半身強化のウエイトトレーニングと瞬発系のメニューを多くこなしていました。二刀流プレーヤーとしてシーズンを通して健康に保てるよう、フィジカル強化の徹底に努めます。

2020年シーズンは19年途中に痛めた左膝を負傷した影響で、機能回復が優先されたリハビリプログラムが組まれ、筋肉強化のメニューを満足に積めませんでした。

結果は44試合出場、打率.190、ホームラン7本、打点24に終わり、良いところを発揮できないままシーズンが終了。

特にアウトコースへ逃げていく変化球に上手く対応できない場面が多く見られました。テイクバックの際に軸足に十分体重が乗らず、イメージよりも早く身体が開いてしまうため、腰が引けた状態で打ちにいく必要がありました。

徹底したウエイトトレーニング

ボールに上手く力が伝わらず内野ゴロや空振りが増え、シーズンを通して打率が上がりませんでした。2020年シーズンの結果を受け、昨シーズンオフはデッドリフト・ジャンプ・片足スイングなど、徹底したウエイトトレーニングを行います。

背中・お尻・ハムストリング周辺の筋肉が強化され、フォームの安定感やスイングスピードが向上しました。同時に大谷選手はスイング軌道の改造にも着手します。ボールに対してバットを下から入れるアッパースイングに変更しました。

アッパースイングはボールにバックスピンをかけやすく、ホームランを打てる確率が高まります。特にレベルスイングだとゴロになりやすい低めの速球・変化球に角度を付けやすく、力強い打球を飛ばせます。

ただし、他のスイング軌道よりも余計に重力がかかるためバットが遠回りになりやすく、スイングスピードを速くするためにはパワーが必要でした。大谷選手はトレーニングで下半身の筋肉を強化し、威力のあるスピードボールにも負けない力強いスイングを生み出しています。

結果として球種・コース・高低を問わずにホームランにできるスイングが確立され、昨シーズンはア・リーグ3位の46本塁打を記録しました。長打になりやすい打球初速・角度を組み合わせた長距離打者の指標とも呼べるバレルゾーン率は、ア・リーグトップの12.2%です。