経営の問題点(その1):バランスシートが「太りすぎ」でいた
ライザップの株価はなぜさえなかったのでしょうか。
まずひとつ目の問題は、バランスシートが「太りすぎ」ていたのではないかという観点です。
ライザップは、フィットネスサービスをユーザーに提供する会社ですが、一方で同社のバランスシートは決してスリムとはいいがたい、「ぜい肉」が多い状況でした。
その背景としては、同社は過去、積極的なM&Aを通じて経営難に陥った会社を次々と買収し、事業を拡大してきました。
しかし、経営再建が滞ったり、M&Aで肝心となるシナジーを生み出すことに失敗したりと、結果としては、買収した事業が収益をもたらす「筋肉」にはならず、採算の悪い「脂肪」となってしまうケースがありました。
しかし、経営難の会社の買収は、まったく利益につながらなかったわけではありません。
これらは「負ののれん計上」という形で、あくまで会計上ではありますがライザップの利益増加に寄与し、2017~2018年の株価急騰のきっかけになりました。
ただ、この利益は「キャッシュ」の増加が伴うわけではなく、また継続性もないので、株価は大きな上昇幅を全て吐き出して元の水準に落ち着くといった結末を迎えました。
こういった事態を受け、ライザップは近年、「事業の選択と集中」「新規M&Aの原則凍結」「成長事業への経営資源集中」など、筋肉質な経営に向けて構造改革を進めるに至りました。
具体的には、不採算店舗の閉鎖、在庫の圧縮、販管費の抑制、業績の悪化した子会社の事業売却などを進め、着実に採算は改善しているようです。
ただ、足元では広告宣伝費といった先行投資などの費用もかさんでおり、直近の営業利益率は3%と、いまだ高収益体質は実現されていません。
執筆者
1991年生まれ。新潟県新潟市出身。2022年に株式会社モニクル傘下の株式会社ナビゲータープラットフォームに入社し、現在はメディア事業部・メディアグロース企画推進室マネージャー。くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」を中心に、多くの読者の方に幅広いコンテンツを届けるための戦略立案に従事している。
それ以前は、LIMO編集部にてアシスタント・コンテンツマネージャー(ACM)として従事。第一報として報道されるニュースを深堀りし、読者の方が企業財務や金融に対する知的好奇心を満たしたり、客観的データや事実に基づく判断を身に付けられたりできる内容の記事を積極的に発信していた。
入社以前は、株式会社フィスコにて客員アナリストとして約20社を担当し、アナリストレポートを多数執筆。また、営業担当として、IRツール(アナリストレポート、統合報告書、ESGレポートなど)やバーチャル株主総会サービス、株主優待電子化サービスなどもセールス。加えて、財務アドバイザーとしてM&Aや資金調達を提案したほか、上場企業向けにIR全般にわたるコンサルティングも提供。財務アドバイザリーファームからの業務委託で、数千万~数十億円規模の資金調達支援も多数経験。
株式会社第四銀行(現:株式会社第四北越銀行)、オリックス株式会社でも勤務し、中小・中堅企業向け融資を中心に幅広い金融サービスを営業した。株式会社DZHフィナンシャルリサーチでは、日本株アナリストとして上場企業の決算やM&A、資金調達などのニュースと、それを受けた株価の値動きに関する情報・分析を配信。IPOする企業の事業・財務を分析し、初値の予想などに関するレポートを執筆。ロンドン証券取引所傘下のリフィニティブ向けに、週間・月間レポートで、日本株パートを執筆。経済情報番組「日経CNBC」にて毎月電話出演し、相場や株価の状況も解説していた。
新潟県立新津高等学校を経て、2013年に慶応義塾大学商学部を卒業。学部では、岡本大輔研究会にて企業評価論、計量経営学を専攻していた。
最終更新日:2023/11/03