認知症になってしまったら「成年後見制度」
凍結されてしまった口座から預金を引き出したい、自宅を売却して入居費用に充てたいといった場合は「成年後見制度」を利用することで可能となります。
成年後見制度とは、認知症などにより、判断能力が衰え、財産の管理や契約などが適切に行えなくなった人を保護・支援する仕組みです。
成年後見制度は大きく分けると、法定後見制度と任意後見制度に分けられます。
法定後見制度は判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所が選任した後見人等が財産を管理する制度、任意後見制度は判断能力が衰える前に、事前に後見人などを決めておく制度です。
※法定後見制度
配偶者や四親等内の親族などが家庭裁判所に申立てを行い、家庭裁判所の調査官によって、審理、審判、成年後見人の選定、審判の確定がされると、法定後見が開始されます。申立てから開始までの期間は多くの場合3~4カ月かかります。
家庭裁判所が調査をし、適正を判断して成年後見人を選定するため、申立てをした親族が必ずしも成年後見人になれるわけではありません。
※任意後見制度
任意後見制度は、本人の判断能力があるうちに、あらかじめ任意後見人や代理権を与える内容を決めておき、本人の判断能力が不十分になった後に,任意後見人がこれらを本人に代わって行う制度です。
本人と任意後見人となる人との間で公正証書により契約を締結します。任意後見人は家庭裁判所選任する任意後見監督人の監督のもとで、財産管理を行います。
法定後見制度と比べると、後見人を本人が選べる、財産管理の内容を本人が決められるなど、自由度が高いのがメリットです。ただし、認知症が進んでからでは契約できないので注意が必要です。
*成年後見制度の注意点
成年後見制度は、認知症になってから申立てによって利用できる制度です。申立てから制度の利用まで3~4カ月かかるため、その間、必要なお金を引き出せないなど不便があります。
また、認知症になった本人に代わって財産を維持、管理することが目的であるため、不動産の売却に家庭裁判所の許可が必要、預貯金を積極的に運用できないなど、財産管理に対する制約が多いのが難点となります。また、定期的な報告義務などの負担も発生します。