成年後見制度も家族信託も費用がかかる
家族信託は初期費用が多くかかる点、成年後見制度は手続きのための費用、後見開始後に成年後見人などに支払う報酬などのランニングコストがかかる点に留意する必要があります。
家族信託の費用は委託者が支払い、成年後見制度の報酬は被後見人(親)の財産から支払われます。
費用の目安として、家族信託の場合は、初期費用としておよそ50~100万円、成年後見制度の場合は、初期費用およそ10万円+成年後見人などへの報酬180万円(月3万円×5年間とした場合)の計190万円程度をみておくとよいでしょう。(※)
※本人の所有財産や、期間、依頼先によって費用は変わりますので、参考程度にお考えください。
まずは相談することが大事
認知症になる前に対策をとっておく方が、本人の意向に沿った財産管理ができ、費用面でも安くすむ場合があるので、メリットは多いでしょう。
しかし、元気なうちは危機感が乏しく、なかなか対策ができないのが実情です。まだまだ大丈夫と思っているうちに、認知症を発症してしまうケースは少なくありません。
そうなった場合も、慌てずに、まずは身近な人に相談をしてみましょう。弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談するのが難しい場合、ケアマネージャーや地域包括支援センターの窓口などに相談をしてみましょう。
また、財産の管理まではいかない、日常の生活費の問題であれば、「日常生活自立支援事業」を利用してみるとよいでしょう。認知症や知的障害などで判断能力に不安がある人のために、日常生活費の管理や日常生活上の消費契約、行政手続きをサポートするサービスです。
全国の市区町村の社会福祉協議会が窓口となっており、利用料は平均1200円(参考)、相談は無料です。認知症や介護の問題は、家族だけで悩まずに家族以外の人に知ってもらうことが大事です。「まずは相談」を合言葉に一歩を踏み出しましょう。
参考資料
- 厚生労働省「認知症 知ることから始めよう みんなのメンタルヘルス」
- 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A」成年後見制度・成年後見登記制度
- 裁判所「申立てにかかる費用・後見人等の報酬について」
- 厚生労働省「日常生活自立支援事業」
石倉 博子