こうした学力テストの結果など、数値化できるスキルは「認知能力」と呼ばれています。一方、この10年、日本で注目を集めているスキルに「非認知能力」があります。非認知能力とは、自己肯定や忍耐力など、生きる上で重要な力とされています。
これまで非認知能力と読書を関連付ける大がかりな調査は国内でほとんど行われてきませんでした。しかし、冒頭に述べた国立青少年教育振興機構の調査分析では、強い関連性が示されています。
読書習慣は意識・非認知能力にも影響を与える
「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」では、小中高での読書習慣に基づき4つに分類されたグループで「意識・非認知能力」を分析しています。4つのグループは以下の通りです。
- 小中高少群:小中高を通して読書量が少ない
- 上昇群:小中高で緩やかに読書量が上昇している
- 低下群:小中高で読書量が低下している
- 小中高多群:小中高を通して読書量が多い
すると、意識・非認知能力とされる「自己理解力」「批判的思考力」「主体的行動力」のいずれにおいても、小中高多群が一番高く、小中高少群は3分野ともに最も低い結果となりました。
この調査結果だけで断言はできませんが、成人してからの意識・非認知能力の高低は子どもの頃の読書量と連動していることが示唆されています。つまり、「小中高を通じて読書を継続していると、社会人になってからもプラスに働く」というわけです。
今は、グローバル化の進展に加え、コロナ禍による経済停滞もあり、「この仕事に就いていれば大丈夫」とは言えない時代になりました。先行き不透明な中、自分自身で人生を切り拓いていくのに「自己理解力」「批判的思考力」「主体的行動力」は必須です。
こうした能力の形成には複合的な要因があると考えられますが、小学生から高校生の10年間での読書活動が成人以降の意識・非認知能力の高低に影響が及んでいる事実は、読書習慣のメリットの具体的な例になると言えるでしょう。意識・非認知能力と読書を関連付けた今回の結果は非常に意義あるもので、さらなる調査が期待されます。