AIM製剤はいつ完成するの?
慢性腎臓病の治療では今までその進行を抑える有効な方法がなく、食事の変更や飲み薬、サプリメントなどで悪化をなるべく食い止めるというものしかありませんでした。
しかし、ここにAIM製剤という治療法が登場すると大きく事情が変わるのです。AIM製剤の投与により尿細管に詰まったたくさんのデブリを解消し、腎臓病の進行を抑えることが期待されています。
腎臓病と闘っている猫には待望の薬ですが、研究開発に新型コロナウイルス感染症の影響が立ちはだかり、2020年6月頃から開発が一旦ストップしてしまいました。そんな状況がネットやSNSを中心に日本中の愛猫家に広がり、研究が進み「1日でも早く進みAIM製剤が世に出回るように」と東京大学基金に数週間のうちに約2億円もの金額が集まりました。
私も腎臓病の猫2頭と暮らしており「いつその薬が使えるようになるんだろう?」ととても気になるところですが、新薬の開発には膨大な時間とお金がかかります。一般に出回るようになるまではまだ2-3年ほどかかってしまうようです。
しかしそれに先立って、猫が本来持っているAIMを活性化させるようなサプリメントは来年にも流通する予定のようです。これはすでに進行した腎臓病にはあまり有効ではありませんが、病気が初期の段階では進行を抑えることが期待できるだけでなく、健康な状態から摂取することによって慢性腎臓病の発症自体を予防できるかもしれないと言われています。
AIM治療はまだ日の目を見ていない段階のものですが、完成すれば病気の治療が従来と大きく変わってくるでしょう。獣医師としてだけでなく、一猫飼いとして大真面目に猫の寿命が30歳というのが当たり前になる未来のためにAIMをはじめ、様々な治療法がこれからもどんどん生まれていって欲しいと願っています。
参考資料
- 一般社団法人ペットフード協会 令和2年 全国犬猫飼育実績調査
- guinness world records「oldest-cat-ever」
- 東京大学「宮崎 徹 教授による猫の腎臓病治療薬研究へのご寄付について」
- 時事ドットコムニュース「『ネコのおやつ』で腎臓病予防も 『機能しない』AIMを活性化する成分発見 東大大学院・宮崎徹教授インタビュー」
「レイクタウンねこ診療所」 長谷川 諒