2021年7月、東京大学基金で数週間のうちに約2億円が集まり一躍有名になったAIM製剤。この研究が進めば猫の腎臓病治療が大きく変わるかもしれないと言われています。今回は猫の寿命と腎臓病の関係、AIMとは一体どういうものなのかなど、獣医師である筆者からお話ししたいと思います。
猫の平均寿命はどれくらい?
一般社団法人ペットフード協会が発表した「令和2年 全国犬猫飼育実績調査」によると、2020年の調査では猫全体の平均寿命は15.45歳でした。これは2019年の15.03歳よりもさらに伸びており、平均寿命は年々長くなっています。
では最高齢の猫はいったい何歳ぐらいなのでしょうか?ギネス世界記録によると、最長寿記録はアメリカのテキサス州で暮らした“クリームパフ”という名前の猫で「38歳3日」だったそうです。この年齢、ヒトに換算すると約170歳にもなるので驚くばかりです。
日本国内での猫の平均寿命は少し前までは10歳にも満たなかったですが、近年の獣医療の発展や屋内飼育が当たり前となり生活環境が改善されたことで大幅に伸びてきました。そんな現代の猫の平均寿命でもまだ最高齢の猫の年齢の半分にも達していません。これは“クリームパフ”が特別であったこともあると思いますが、実は猫は本来それぐらいまで長生きすることができるポテンシャルがあるのかもしれません。
ではなぜ今は平均寿命が約16歳なのでしょうか。それは病気で命を落としている子が多いからとも言えるでしょう。
そんな猫の寿命に大きく影響する高齢期に多い病気といえば腎臓の病気。10歳以上の高齢猫の30〜40%が罹患しているとも言われ、がんと並び死因のトップです。一口に腎臓病と言っても様々ありますが、特に高齢猫に多い「慢性腎臓病」は病気の進行がゆっくりで、初期の段階ではなかなか異常に気づけず、しばしば発見が遅れてしまいます。
この腎臓病の一番怖いところは一度失われてしまった腎機能は二度と回復をしないということです。「二度と回復をしない」と言われるとショックは大きいですよね。
近年になり、そんな腎臓病に対する治療の新たな希望となるかもしれない、と言われているのが“AIM”です。