投資信託は他のリスクを取る運用商品、すなわち株、債券、為替、外貨預金、FX証拠金、ラップ等と比較してどういった効用を求めることができるのでしょうか。ポイントを整理してみました。
投資信託の効用を考える
「投信とは何か?」――私のように投資信託の供給者側として商品企画を十数年生業としていると、かえって忘れてしまう投資家にとっての投資信託の効用を改めて考えてみました。
そもそも、投信は数ある運用商品の一形態に過ぎません。運用会社や販売会社は各社の相場観に沿ったセールスストーリー、投資対象資産や国の魅力等を訴求します。ただ、その商品だけを見ている供給者側は、ともすればタコツボ的思考に陥りがちです。
では、投資家にとって、投資信託は他のリスクを取る運用商品、すなわち株、債券、為替、外貨預金、FX証拠金、ファンドラップ等と比較してどういった効用を求めることができるのでしょうか。
以下の様に7つのポイントに整理してみました。まず前編では1~4までをお伝えします。
この記事の読者層は運用商品にご関心があるという前提で、モデルケースを金融資産1,000万円、元本を保証されないリスク商品に3-4割を投資可能とします。現実的に考えても1,000万円の預金保有者が、個人での運用を主業としない限り、全額を株や投信に振り向けることは考え難いでしょう。
投信の効用 1.(同時点における)銘柄分散
「卵は一つのカゴに盛るな」の格言にあるようにリスク分散は大切です。しかし、上記事例のように3-400万円をリスク商品への運用に振り向ける場合、例えば銘柄でいえば、トヨタ自動車(7203)なら最低単位でも67万円、日本電信電話(9432)で50万円が必要となります。そのため、個人投資家にとって十分な銘柄分散は資力から言って絵に描いた餅でしかありません。
一方で、投信は10万円程度で例えば日経平均全体の分散効果を買うことができます。
投信の効用 2.(同時点における)資産分散
1. と理由は重なりますが、景気拡大を享受する株式と下降時の金利低下を享受しうる債券に分散投資すると、負の相関でリスクの軽減効果が期待できます。
しかし、個別株式と債券を買うとせいぜい2-3銘柄ずつしか買えず、個別銘柄の特殊な動きによっては各々の商品特性が十分に享受できないケースもままあります。その点、投信はいろいろな資産に分散されたポートフォリオを輪切りにして少額で買うことができます。
投信の効用 3. 時間分散
相場のプロでも「底値で買って天井で売る」のは至難の業です。むしろプロはそれを熟知しているからこそ日や時間帯等、タイミングを分散して一時点に賭けることはしません。
しかし、個人投資家にとっては元手が限られている関係から、先のトヨタ株の事例でも2-3回に分けて買うとそれだけで運用可能資産の半分程度を費やしてしまいます。
投信であれば数万円を数回に分けて1ファンドに合計30万円投資し、それを複数ファンドで繰り返しても100万円あれば時間も銘柄も分散可能です。販売会社や運用会社はあまり訴求しない点ですが、一般的な金額を投資する個人にとっては投信を利用する大きなメリットです。
投信の効用 4. マーケットアクセス
いわゆる新興国と言われるインドや中国本土は外国からの投資に規制を課しており、煩雑な手続きを経て外国人機関投資家投資枠の取得等が必要です。かつ決済も翌日渡し等ですので個人投資家が個別株を買うのはハードルが極めて高く、いくら投資対象国に魅力を感じても直接投資することはできません。
その点、投信はファンド単位あるいは受託銀行が枠を取得して魅力ある市場へのアクセスを可能にしてくれます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。投資信託は、一般的な個人投資家の元手の範囲で、個人でできるレベルを超えた投資機会を得ることができるのがメリットだと言えそうです。
後編では残り3つのポイント、「プロの選択眼」「キャッシュフロー組み換え効果」「税効果」についてお伝えします。
林 俊宏