雇用流動化から目を背け続ける日本

さらに韓国との差も、雇用の流動性の違いがあると分析しています。韓国ではIMF(国際通貨基金)に支援を求めるに至った金融危機に陥った98年以降は、雇用規制が緩和され、流動化が進んだとしています。

さて、ここで冒頭の“現実から目を背け続ける日本人"の話に戻ります。今回の総選挙でも多くの政党が主張した、もう耳タコ化した「新自由主義が格差を助長した」というフレーズがあります。

これが、実はかなりのマユツバものだと思っています。一例をあげます。日本がもし仮に小泉政権以降、新自由主義だったとしても、元祖・英米をはじめとする海外と比べればマイルドな形であるのは確かでしょう。

そんな日本で、正規社員と非正規社員の賃金格差が海外との比較において圧倒的に大きい。

さて、どう解釈すれば良いのでしょうか。これは新自由主義のせいでもなんでもなくて、要は正規社員側を整理解雇4要件などで保護して、そのツケを非正規側に押しつけたということだと思います。つまり、ここでも雇用の硬直化が最大の元凶になっています。

結局のところ、ここ数十年間、日本は雇用維持を優先し、現実と成長から目を背けて、賃金を抑制し続けてきました。

「新しい日本型資本主義」も結構な話だとは思いますが、もう少し世界標準の資本主義に近づけて、それから日本型を考察しても遅くはないのではという気も、ちょっとします。

参考資料

榎本 洋