株式投資での生かし方

ここまで、ESGの基礎知識や実際のビジネス・金融市場での動きについて解説してきました。では、これを踏まえて個人投資家は何を意識すればよいのでしょうか。

結論からいえば、「海外の機関投資家におけるESG投資の情報をキャッチアップし、それを踏まえて企業を観察し、優良銘柄を選ぶ」ことが重要だと考えます。ESG投資の源流は海外の機関投資家にあり、日本国内の動きはそれに沿う形で広まるケースが多いからです。最上流でどのような動きが起こっているかをニュースなどで把握することで、「将来的に買われる株・売られる株」を考えるうえでのヒントが得られるでしょう。

たとえば、一部メディアによると、米政府は企業年金のESG投資推進を目的に年金基金向け規則を改正し、気候変動リスクや従業員の多様性なども踏まえて投資先を選べるようにするといいます。こうした情報を受け、「気候変動リスクや従業員の多様性に優れた会社はどこか?」という視点を持つと、これまでと一味違った企業選びができるようになるでしょう。

さらに、企業分析のポイントもお伝えします。近年、自社サイトや決算説明資料内で自社のESGの取り組みを説明する企業は増えてきています。しかし、企業によって対外的な見せ方や実際の取り組み内容において濃淡があることがよく見るとわかります。「取り組み内容は素晴らしいが見せ方が弱い」「見せ方はうまいが取り組みの内容が弱い」などいろいろなケースが見つかるが、「投資家に評価されやすい取り組み・開示をしている企業はどこか?」という目線を持つと、より効果的な企業選びができるでしょう。

また、隠れた優良株を探すのもESG投資の醍醐味。ESGの視点で企業選びをしたことのある投資家なら感じたことがあるかと思いますが、関連性が強ければ強いほどすでに高いバリュエーションがついているケースは多いのです。

たとえば、再生エネルギー関連企業などは幅広く買われ、手の出しづらい株価水準になっているものも散見されます。

しかし、脱炭素の話でも説明した通り、間接的な事業・企業も立派なESG関連です。「主力事業ではないものの、風力発電設備の部材を製造・販売している」といったように、部分的であれ絡む企業は少なくありません。情報収集し、市場よりも先にこうした株を見つけて買いを仕込むことも、効果的なESG投資と言えそうです。

石津 大希