明確にビジネス・株式投資の世界で影響が!~脱炭素のケース~
ここからは、ESG普及を背景としたリアルな動きについて紹介します。今回取り上げるのはESGの中の「E(環境)」について、特に動きが活発なテーマである「脱炭素」を解説していきます。
二酸化炭素(CO2)排出による地球温暖化の進行を抑制しようという狙いから、事業会社や金融機関において化石燃料事業からの撤退が進められています。
たとえば、三菱UFJ銀行や三井住友銀行といった国内メガバンクや日本生命などの大手保険会社では、石炭火力発電向けの新規融資が停止されました。投資会社では、野村アセットマネジメントが2030年を目安に、運用資産の「過半数」を温暖化ガス排出量実質ゼロの企業に割り振ると発表。第一生命保険も、運用ポートフォリオの脱炭素を目指す機関投資家の国際的イニシアチブに加盟しています。
このように、「地球温暖化につながる事業にはお金が向かわない」という潮流が急速に広まっています。投資家の文脈で説明するならば、「事業環境悪化に伴う減収減益や、関連資産における評価価値切り下げによる損失を避けたい」といったところだと推測されます。
また、化石燃料を主要事業とする会社でも脱炭素は進んでいます。以前から石炭事業に対する批判を受けていた豪英資源大手のBHPグループは、コロンビアの炭鉱の権益を売却すると発表。石油メジャーの英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルも、ESG投資の普及を受けて機関投資家による評価を意識した経営にシフトすると報じられています。同じく石油メジャーの米エクソンモービルでは、投資ファンドが推薦した環境保護派2名が取締役に選任されました。そのほか、間接的な事業でも幅広く脱炭素は進み、国内では建機メーカーのコマツも売上高に占める石炭鉱山向け機械の比率を引き下げると報じられています。
ESGの考え方を起点に、国内外ではこのような変化が次々と起こっています。「お金が集まらない」「商売が細っていく」といった生々しい潮流を知れば、ESG投資が決して「表面的なきれいごと」ではないことがおわかりいただけると思います。