老後2000万円問題の「落とし穴」

60代世帯の貯蓄事情を眺めたあとは、冒頭でも触れた「老後2000万円問題」についてお話ししていきます。

金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」では、モデルケースの高齢世帯について、以下のような試算がなされています。

「老後2000万円問題」を分かりやすく整理!

オレンジ枠の中が「2000万円」の根拠ですね

この計算で、「老後に公的年金以外に2000万円が必要」とされたのですが・・・・・・。実は、この試算の大きな「落とし穴」がいくつかあります。住居費と介護費用の扱い方です。

落とし穴・その1 住居費が約1万4000円で計算されている

モデルケースの高齢夫婦無職世帯の毎月の支出の中で、「住宅費」は持家世帯を前提として約1万4000円で計算されています。

老後も賃貸物件に住み続けることを考えた場合、家賃との差額分を、2000万円とは別に準備しておく必要があります。

落とし穴・その2 「介護費用」がまったく含まれていない

また、この支出の内訳には「介護費用」が入っていません。

参考までに、LIFULL介護「老人ホームの相場」のデータをもとに、平均入居期間の5年で計算した場合、有料老人ホームで約1900万円、サービス付高齢者向け住宅で約1000万円の費用がかかります。

終の棲家として高齢者施設を選ぶ場合、かなりまとまった金額が必要となりそうですね。

さらに、趣味やレジャーを楽しんだり、お孫さんへのおこづかい、冠婚葬祭などで必要となる「おつきあい費」なども、ある程度はキープしておきたいところ。また、住まいが老朽化したり、バリアフリーのリフォームが必要になったり・・・・・・といった、シニア世代特有の出費がある世帯も多いでしょう。

老後に必要なお金は家族のライフスタイルや健康状態などによってさまざまです。とはいえ、このようにさまざまな「上乗せ部分」が必要となります。「貯蓄2000万円があれば老後は安泰だ」と言い切ることは難しいといえそうです。