おひとりさまが今からできることは?
これまで平均給与と貯蓄額をみてきました。お金に関する厳しい現実がある一方で、時間は誰にも平等なもの。確実に老後はやってきます。
生命保険文化センターの調査によると、老後資金を使い始める平均年齢は65.9歳からです。一般的な年金の受給開始年齢は65歳から。今の働く世代はもう少し伸びる可能性もありますが、「65歳」を老後の一つの目安として、3つのステップで老後の計画を立ててみましょう。
公的年金の受給額を確認する
老後資金の柱となるのは公的年金の受給額です。まずは自分がいくらくらい年金を貰えそうか、目安を確認しましょう。
ちなみに、厚生労働省年金局の「厚生年金保険・国民年金事業年報 令和元年度」によると、今のシニア世代の国民年金と厚生年金の受給額は以下の通り。
国民年金(自営業など)
- 〈男性〉平均年金月額:5万8866円
- 〈女性〉平均年金月額:5万3699円
厚生年金(会社員や公務員など)
- 〈男性〉平均年金月額:16万4770円
- 〈女性〉平均年金月額:10万3159円
国民年金のみでは生活できないので、早めに老後対策をはじめたいところ。厚生年金であっても、年金のみで生活するのは厳しいでしょう。
特に産後に専業主婦や扶養内パートをしていた女性は、おひとりさまになった場合に厚生年金であっても受給額が低い可能性にあります。子どもとの生活費や教育費などもありますが、早いうちから老後対策も立てたいところです。
また、上記は今のシニア世代のため、40~50代の方が受給する頃には年金額がこれより低くなる可能性も考えておきましょう。
年金の上乗せを考える
公的年金で不足する分は、年金を上乗せする方法を考えましょう。
まずは厚生年金に加入していない方は、働き方を変えて厚生年金に加入するのも一つです。厚生年金は次のように適用を拡大しています。
- 2016年10月~:従業員500人を超える規模の企業で、一定条件を満たす方
- 2017年4月~:500人以下で労使合意に基づき申し出をする企業に所属し、一定の要件を満たす方
- 2022年10月~:従業員数100人超規模の企業、一定条件を満たす方
- 2024年10月~:従業員数50人超規模の企業で、一定の要件を満たす方
シングルマザーでなかなかフルタイムになれない方も、上記のような制度の変化を考えながら、働き方を考えるといいでしょう。
また、国民年金のみの方は国民年金基金に加入する方法もあります。
他に個人年金保険やiDeco(個人型確定拠出年金)などを利用して、私的年金で上乗せを検討するといいでしょう。
貯蓄に資産運用を取り入れる
月々の生活費が確保できたら、次は貯蓄です。病気をしたり介護が必要になったりと、万が一のことがあったときのことを考えると、まとまった貯蓄を用意しておきたいですね。一般的に介護で施設に入る際に必要な金額は約1000~2000万円程度といわれています。
しかし、1人で働くには限度もあります。ある程度預金が貯まったら、貯蓄をするのに資産運用を取り入れるのも一つでしょう。
預金と並行して行いたいのが、長期間かけて毎月積み立てる資産運用です。いま話題のつみたてNISAは、通常20.315%かかる運用益が、毎年40万円まで、最長20年間非課税になる制度(非課税運用額は最大総額800万円)。
たとえば20年間で1000万円貯める場合、預金とつみたてNISAで年率3%で運用できた場合を比べてみましょう。
20年間で約1000万円貯めるのに必要な毎月の積立額
- 銀行預金:毎月4万1666円(メガバンクの普通預金金利0.001%)
- つみたてNISA:毎月3万円(年率3%で20年間で984万9060円)
年3%で運用できれば、月1万1666円負担が減ります。
もちろん数多くある金融商品の中から自分で選ぶ必要がありますし、元本割れのリスクもあります。ただ投資信託で投資対象を、積み立てで投資時期を分散することで、ある程度リスクを抑えることもできます。今はオンラインのセミナーなども開催されていますので、まずは情報収集をしてリスクもしっかり把握しておきましょう。
それぞれメリット・デメリットはありますが、自分ができることからはじめてみてくださいね。
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参考資料
- 国税庁「令和2年分(2020年)分民間給与実態統計調査」調査結果報告
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和2年)」
- 公益財団法人生命保険文化センター「『老後』とはいつから?」
- 厚生労働省年金局「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」
- 日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
宮野 茉莉子