内閣府「令和3年度版高齢社会白書」によると、65~69歳以上の労働人口比率は年々上昇しており、2020年には51%と半数にのぼりました。

また、お勤め以外にもボランティアなどの社会活動も含めると、約7割が社会との関わりを持っているようです。

人生100年時代が到来するこんにち。老後の収入の柱である老齢年金は、受給開始時期を変更できるのはご存知でしょうか。

65歳以降も仕事を続けているのであれば、受給スタートを遅らせて、年金額を増やしたいと考える方もいらっしゃるかもしれませんね。

そこで今回は、年金受給の「繰下げ受給」「繰上げ受給」にスポットを当てて、年金の受給開始時期によってどのくらい差が出るのか見ていきます。これからライフプランを考える方や、老後生活を迎える方は必見です。

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老齢年金受給のスタートを遅らせる「繰下げ受給」とは

まずは、老齢年金の「繰下げ受給」の場合を見ていきましょう。

「繰下げ受給」は、老齢年金を遅く受け取り始めるかわりに、遅らせた月数に応じて受給額が増える制度です。また、法改正によって2022年4月以降、繰下げ受給の上限年齢が75歳にまで引き上げられることも決まっています。

では、どのように受給額が増えていくのでしょうか。計算式を見ていきましょう。

繰下げ受給「増額率」の計算式

増額率=65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数×0.7%

具体的には、

  • 1年間繰下げた場合:0.7%×12ヵ月=8.4%増
  • 70歳まで繰下げた場合:0.7%×60ヵ月=42%増
  • 75歳まで繰下げた場合:0.7%×120ヵ月=84%増

といった具合で年金額が最大84%増えます。さらにこの増額率は生涯変わりません。健康面と資金面で自信があれば、ぜひとも活用したいところです。

また、老齢基礎年金・老齢厚生年金は同時に繰下げ受給することも可能です。さらに片方を65歳に受け取ったり、受け取る時期を65歳以降でずらすこともできます。

仮に、国民年金と厚生年金を繰下げた場合、受給平均額はどのように変わるでしょうか。国民年金・厚生年金保険(第1号)の平均年金月額(※)をもとに計算してみましょう。

※厚生労働省年金局「厚生年金保険・国民年金事業年報 令和元年度」

国民年金(全体平均受給額:5万5946円)

  • 1年間繰下げた場合:5万5946円×108.4%=約6万645円
  • 70歳まで繰下げた場合:5万5946円×142%=約7万9443円
  • 75歳まで繰下げた場合:5万5946円×184%=約10万2940円

厚生年金保険(第1号)(全体平均受給額:14万4268円)

  • 1年間繰下げた場合:14万4268円×108.4%=約15万6386円
  • 70歳まで繰下げた場合:14万4268円×142%=約20万4860円
  • 75歳まで繰下げた場合:14万4268円×184%=約26万5453円

老後の生活のための貯蓄が豊富にあるのであれば、貯蓄で生活することで遅らせて受給額を増やすライフプランも魅力的ですね。