老齢年金を前倒しでもらう「繰上げ受給」とは
実は、「繰下げ受給」とは逆の「繰上げ受給」という制度もあります。
老齢年金の「繰上げ受給」は、本来の65歳よりも前に年金を受取り始める代わりに、前倒しした月数に応じて受給額が減らされる制度です。
60歳以上65歳未満の間に年金生活をスタートすることができます。
繰上げ受給の減額率は「65歳から何カ月前倒しにしたか」で決まります。そして、この減額率は生涯変わりません。
つまり、65歳になった時点で本来の受給額に戻ることはない、という点に注意しましょう。
繰上げ受給「減額率」の計算式
減額率=繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数×0.5%(※)
(※2022年4月以降は繰上げ1カ月あたりの減額率は0.4%に緩和される予定)
具体的には、
- 1年受け取りを早めた場合:0.5%×12ヵ月=6.0%減
- 3年受け取りを早めた場合・:0.5%×36ヵ月=18.0%減
- 60歳から受け取った場合:0.5%×60ヵ月=30.0%減
※老齢基礎年金と老齢厚生年金はいっしょに繰上げる必要があります。
仮に、国民年金と厚生年金を繰上げた場合、受給平均額はどの様になるのでしょうか。
国民年金
- 1年受け取りを早めた場合:5万5946円×94%=約5万2589円
- 3年受け取りを早めた場合:5万5946円×82%=約4万5875円
- 60歳から受け取った場合:5万5946円×70%=約3万9162円
厚生年金保険(第1号)
- 1年受け取りを早めた場合:14万4268円×94%=約13万5611円
- 3年受け取りを早めた場合:14万4268円×82%=約11万8299円
- 60歳から受け取った場合:14万4268円×70%=約10万987円
かなり年金額が減ってしまうことがわかります。また、年金を早く受け取れるメリットがある一方、以下のデメリットに注意が必要です。
- 一度受給を請求すると変更や取り消しができない
- 減額された年金額は一生変わらない(65歳になっても「本来の額」には戻らない)
- 障害年金を請求できなくなる場合がある
- 国民年金の任意加入ができなくなる
65歳までの生活費が苦しくなければ、繰上げ申請はしないほうが良さそうです。利用を検討する際は慎重な判断が必要でしょう。