「わが家はふつうの家庭だから、遺産トラブルなんて無関係だろう。まして遺言なんて一部のお金持ちがしたためるもの」

ほんとうにそう言い切れるでしょうか・・・・・・。

司法統計によると、2019年に家庭裁判所で調停を受け、遺産分割が成立した件数は総計7224件。そのうち、遺産額が5000万円以下のケースが5545件で、さらに1000万円以下のケースに絞ると2448件です。

「争族」トラブルの実に3割が、遺産総額1000万円以下の相続で起きているわけですね。

自宅などの不動産を含めると、遺産総額は1000万円はおろか、5000万円程度にまでなることは決して珍しいケースではないでしょう。

「ちょっとひとごととは思えない……」と感じたかもしれませんね。

相続トラブルを防ぐ準備の一つが「遺言」の作成でしょう。今回は遺言の種類やメリット・デメリットなどについて見ていきます。

そもそも「遺言」って?

【遺言(ゆいごん/法律用語では“いごん”】

デジタル大辞林(小学館)では、「人が、死亡後に法律上の効力を生じさせる目的で、遺贈、相続分の指定、相続人の廃除、認知などにつき、民法上、一定の方式に従ってする単独の意思表示」と定義されています。

また、民法第967条では、「遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない(以下略)」と、3つの遺言方式が定められています。これらは、一般的に「自筆証書遺言」「遺言公正証書」「秘密証書遺言」と呼ばれるものです。

3つのうち、内容面で最も信用性が高いのは公証人が作成する「遺言公正証書」ですが、手続きが煩雑で、手数料も必要です。

自筆証書遺言」は、その名の通り自分で書きますので、作成手数料はかかりません。第三者に内容を知られることがない点をメリットの一つと感じる人も多いでしょう。

以前はすべてを自筆する必要がありましたが、2019年1月からは一部パソコン使用が可能となりました。また、2020年7月、作成後の自筆遺言を法務局で保管してもらえる制度が始まりました。

これまで懸念点とされてきた、改ざんや紛失、さらには死後発見されないといったトラブルの回避も期待できそうですね。次では、「自筆証書遺言」と「遺言公正証書」についてみていきます。