ターゲティングの制限は「徐々に」影響が出る?

これらのターゲティング制限の影響の出方は、基本的には「徐々に」というのが正しいです。AppleやGoogleといった大きな企業でも、新しいOSバージョンが出てから利用者に十分に浸透するまでの間には時間がかかるからです。

新機能や制限の浸透が完了するのも、以前のOSバージョンが「サポート終了」になるまでなので、最低でも1年程度は動向を見守る必要があるでしょう。

iOSで強力なプライバシー保護機能が追加されたのは、「iOS 14.5、iPadOS 14.5、tvOS 14.5以降」のバージョンからです。つまり、2021年4月27日以降、ターゲティング制限を含むプライバシー保護機能は徐々に適用され、8月で4カ月目を迎えることになります。

ターゲティング制限によって、実際の利用者側にどのような影響が出るかというと、個人の属性(性別・年齢など)や、利用状況に応じた広告を出せなくなってくるので、次第に「大雑把な」内容の広告の比重が増えてきます。

そうすると、利用者にとって「欲しくなる、魅力的な」ものではなくなる可能性が高くなるので、広告がクリックされなくなります。その結果、各種サービスの販売者である出稿主が広告経由での売上を立てることができなくなり、出稿量が減少し、Facebookの広告経由の売上が下がる……という流れです。

したがって、「第3四半期以降に影響が出る」としたFacebook社の予想は合理的と言えるでしょう。

OSの利用者数がポイントに

インターネットビジネスでは今後「顧客にどちらのOSの利用者が多いか」によって広告収益の明暗が分かれると考えられます。iOS比率が高いサービスの場合は広告ターゲティング規制の影響を避けるのは難しい一方、Android比率が高い場合は比較的猶予があります。

アウンコンサルティング株式会社の調査によると、全世界ではAndroidの方が優勢です。とはいえ、同調査では日本・アメリカでは例外的にiOSのシェアが高いため、Facebook 社の見立て通り、Facebookの業績においては広告収益に影響が出るのは避けられないでしょう。

参考資料

當瀬 ななみ