60歳以上・無職世帯「ほんとうの貯蓄額」
世帯の資産額をみるとき、貯蓄と負債はセットで考える必要がありますね。引き続き、同資料より60歳以上・無職世帯の負債額、そして、貯蓄額から負債額を差し引いた「純貯蓄額」(いわば、ほんとうの貯蓄額ですね)についても見ていきます。
60歳以上・無職世帯「負債のすがた」
平均負債額:78万円
…うち住宅・土地のための負債:60万円
さきほどの平均貯蓄額の2308万円から上記の負債額78万円を差し引くと2230万円。純貯蓄でも2000万円のラインは超えていることが分かりました。
ここでひと安心、という胸をなでおろす前に「老後2000万円問題」に絡めて、少しお話をしていきます。
「老後2000万円問題」の落とし穴
2019年に話題となった「老後2000万円問題」がまだ記憶に新しい、という方もいらっしゃるかもしれません。
モデルケースとなる高齢夫婦世帯について「老後の生活には、年金以外に2000万円が必要である」という内容で世間の注目を集めましたね。
そこで、金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回)厚生労働省提出資料)を参考に、この「2000万円」という金額の根拠を見ていきましょう。
資料の中では、モデルケースとなる夫婦世帯の1カ月の収支について、次のような試算がなされています。
高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)
1カ月の収支
- 実収入(主に年金):20万9198円
- 実支出(主に食費):26万3718円
- 月々の赤字額:約5万5000円
老後必要額=5万5000円×12カ月×30年(老後30年と仮定)=1980万円 ※約2000万円
これが、「2000万円」の根拠となります。「標準的な夫婦世帯で、老後を30年とした場合、公的年金以外に2000万円ほど必要となる」いう計算式ですね。
しかし、この試算にはいくつか落とし穴があるのです。
この支出の内訳をみると、住居費が持家世帯を前提として約1万4000円に設定されていたり、介護費用が含まれていなかったりします。よって、これは「老後最低限の生活費」であると考えておく必要があります。
そうなると「2000万円」とは別に、賃貸物件に住み続ける場合であれば家賃分との差額を、介護が必要になった場合に備えておきたい場合は介護費用を、上乗せして準備しなければならない、というわけです。