もう一つは家主の責任があるかどうかについてです。

今回は築8年と新しい物件ですので、一見家主の責任はなさそうですが、全く責任がないかというとそうではありません。実は家主も責任を問われるケースがあるのです。

民法には「土地工作物責任」というのがあって、建物に問題があった場合には、所有者がその損害を賠償する義務があります。

今回は瑕疵があることを大家さんは知らなかったでしょうから、責任の度合いは少ないかもしれませんが、全く責任がないというわけではありません。これを「無過失責任」と言います。

ちなみに、大家さんが建物の不具合を知っていて補修しない場合には、かなり責任は重くなります。

たとえば、2020年10月に苫小牧のアパートの2階の廊下の床が抜けて、住民が3メートル下に転落して大けがをしたという事件がありましたが、このケースでは事前に管理会社が家主に修繕提案をしていたにも関わらず、家主は無視し続けたのです。

また、2020年5月に釧路のビルで、非常階段の手すりが腐食していて、5階から女性が転落して死亡する事故がありました。これらは明らかに家主の責任が問われる事案だと思います。

損害賠償請求は大家さんに来る

では、今回のような事故が起こった場合の損害賠償請求はどうなるのでしょうか?

一般的な流れとしては、まずは被害者または遺族が家主に損害賠償請求をしてくると思います。家主は保険に加入していればその保険から被害者に損害賠償をしますが、保険に加入していなければ自己負担になります。

次に施工の問題で事故が起きたのであれば、今度は家主から建設会社に損害賠償請求をします。

建設会社も基本的には「生産物賠償責任保険(通称、PL保険)」 に入っていますから、そこから賠償をしますが、これも加入していなければ自己負担になります。

しかし、今回のように会社が自己破産をしてしまうと厄介ですし、最悪、経営者も自己破産してしまえば、被害者は泣き寝入りになってしまうかもしれません。

このように、大家さんに過失がなかったとしても、大なり小なり家主の責任は問われることになるのです。だからこそ不具合は絶対に放置してはいけないですし、万一のことが起きれば、損害賠償では済まないことになってしまうこともあります。