こうした経緯もあり、文部科学省は各大学に受験生の学力把握を義務付けました。とはいえ、AO入試に変わる総合型選抜や、学校推薦型選抜(旧推薦入試)で受験生の学力を測る方法として、小論文、プレゼンテーション、口頭試問や実技、科目試験のどれを実施するかは各大学に委ねられたのです。

しかし、総合型選抜や学校推薦型選抜でも一般入試組と遜色のない学力を求め、独自試験や大学入学共通テストを必須としている大学は少数派であるため、高校生間の学力格差問題の解消には時間がかかりそうです。

静かに登場した基礎診断テスト

実施が見送られた「高等学校基礎学力テスト」の代わりのように登場したのが「高校生のための学びの基礎診断」。テスト結果で進学が左右されるわけではないため、大学入学共通テストほどメディアなどで取り上げられることはありませんが、学習内容の定着度や理解度を測るテストです。

高校1年生、2年生向けに2019年度から実施されており、現在は国語、英語、数学の3教科が提供され学校単位で受験します。テストの作成は文部科学省が認定した複数の民間企業によって行われ、各企業によってコース設定も値段設定も様々ですが、3教科型だと概ね1回3000円から4000円程度の受験費用がかかります。

在学している高校がこのテストの導入を決定している場合、大学進学を希望している生徒は模試を受け、学校の定期試験を受け、そして年に最大3回「高等学校基礎学力テスト」もこなさなければいけません。

高校は偏差値によって「難関校」や「中堅校」などと区分けされます。また、大学入学の難易度にもピンからキリまであるのが現実です。文部科学省が推し進める高大接続改革もこうした実情を踏まえ、複数のパターンで大学進学後に学生の能力を伸ばせる仕組みを構築していく可能性もあります。

今後も高校での教育や大学入試に関しては変更点が出てくるという前提で、子どものいる世帯はより一層情報に敏感になる必要がありそうです。

参考資料

中山 まち子