その他にも、細かな注意点がありますので、いずれにしても繰上げ請求を行う際は、将来の生活設計も視野に入れて、検討することが必要となります。

「年金だけだと生活が大変」という声も多い昨今。

老後の生活の柱となる年金が、繰上げ受給によって早めに受給できるとはいえ、もらえる額が減ってしまうのは老後生活を送る上において心配なところです。

繰上げ受給は実際におトクなのか

繰上げ受給をしたら長生きした時が心配でもありますし、逆にそんなに長生きしないから早く受け取りたい、という人もいるかもしれません。

繰上げ受給をした時の損益分岐点はいったいどこなのでしょうか。

何年後にその分岐点が訪れるのか、実際に計算してみましょう。

厚生労働省の公表した令和3年度の老齢基礎年金額は満額で年間78万900円(月額6万5075円)です。

最大減額率となる60歳で繰上げ受給を申請した場合、減額率は30%となります。

※減額率=0.5%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数(0.5%×5年×12ヶ月=30%)

よって年間受給額は78万900円(老齢基礎年金満額受給額)×0.7(1-減額率)で54万6630円となります。

上記の計算をもとに損益分岐点を算出します。※年ベースで筆者が計算

75歳までの年金額の合計(※1)

※1:繰上げ受給で60歳から16年間、本来の受給で65歳から12年間受け取った場合のそれぞれの合計

60歳から受給(繰上げ):54万6630円×16年=874万6080円
65歳から受給(本来):78万900円×11年=858万9900円

76歳までの年金額の合計(※2)

※2:繰上げ受給で60歳から17年間、本来の受給で65歳から12年間受け取った場合のそれぞれの合計

60歳から受給(繰上げ):54万6630円×17年=929万2710円
65歳から受給(本来):78万900円×12年=937万800円

年単位での比較にはなりますが、繰上げ受給をした場合、16年間分を受け取った時点、つまり75歳まで受け取った分だと、本来の累計額を上回りそうですが、翌年分を受け取った段階で下回ることになりそうです。

ちなみに2020年5月に年金改革法が成立したことにより、令和4年4月1日以降60歳に到達する人を対象として、減額率が従来の月0.5%から0.4%に引き下げられる予定となっています。

今までは最大30%の減額率でしたが、24%に改善されるため、繰上げ受給のメリットは増すことになりますね。