年金を支給しないと生活保護が増える

さらに実質的な理由もあります。年金を払わないと、あるいは大幅に減額すると、生活保護を申請する高齢者が激増してしまうはずです。少子化ですから、身寄りのない高齢者が増えていくわけで、彼らは年金で生活できないならば生活保護を申請せざるを得ないからです。

そうなると、財政赤字はかえって膨らんでしまうことにもなりかねません。従って、財政当局としては「生活保護申請者の激増を防止するために、年金だけは必ず払う」という政策を採らざるを得ないのです。

子のいない被相続人の遺産は国庫に入れるべき

現在の法律では、配偶者も子もいない高齢者が他界した時には、遺産は兄弟姉妹が相続することになっています。それを改正して遺産を国庫に収めることにすれば、高齢者への年金の支払いが容易になるはずです。

年金制度が賦課方式であるということは、子のいない高齢者が受け取っていた年金の原資は他人の子が支払った年金保険料だったわけです。そうであれば、使い残した分は次の世代のために国庫に返還させるのが公平だと筆者は考える次第です。

そもそも兄弟姉妹が相続するのは「棚からぼた餅」のようなものですから、この制度を廃止することに対する反対意見はそれほど強くないと筆者は考えています。そうであれば、これを廃止して遺産を国庫に収めるという案が通る可能性も小さくないかもしれませんね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義