厚生労働省は5年に1度、年金支払額の見通し(財政検証)を発表しています。直近の発表によれば、さまざまなケース分けがなされていますが、比較的保守的な前提を置いたケースVでも、将来の高齢者の受け取る年金は今の高齢者の受け取っている年金より少し減るだけ、という結果となっています。
ちなみに当該見通しはインフレ調整後の数字ですから、年金がインフレで目減りすることはここでは考える必要はありません。
ケースVでも前提が甘いという論者も多いようですが、そうだとしても受取額が2割減るのか3割減るのか、というレベルの話であって、年金が受け取れないといった話では全くない、というのが多くの専門家たちの一致した考え方となっているわけです。
シルバー民主主義が年金を守るはず
少子高齢化が進むということは、選挙権を持つ人の多くが高齢者になる、ということです。人数が多い上に高齢者は若者より投票に行く傾向があるので、高齢者を怒らせるような政策を掲げる政党は次の選挙で痛い目に遭う可能性が大きくなります。
したがって、どの政党も高齢者に優しい政策を掲げざるを得なくなる、というのが「シルバー民主主義」と言われる状態です。
筆者としては、年金問題は与野党の政争の具にするのではなく、与野党が協力して政策を打ち出すべきだと考えていますが、実際には難しいでしょうから、与野党が競って高齢者のご機嫌を取るような政策を打ち出す可能性が高いでしょう。
そうなれば、「若者向けの支出を削り、現役世代に増税をしても高齢者への年金支払いだけは減らさない」という政策が採用される可能性が高いと考えて良いでしょう。