「夢は正社員」は完全な時代錯誤
ここで海外事例を再度チェックしてみます。参照モデルは20世紀後半の “スウェーデンモデル"。
「レーン=メイドナー・モデル」とも呼ばれるモデルですが、これは企業の枠を超えて、業界内での同一労働同一賃金を実現しました。大企業では賃下げ、中小・零細企業では賃上げと、賃金水準は中間位に設定されます(連帯的賃金政策)。
当然、中小・零細企業は経営が苦しくなります。
ここで日本だと「雇用調整助成金」という必殺技が登場するわけですが、「では市場退出(倒産)してください」がスウェーデン流ということになります。そして失業者を「積極的労働市場政策(アクティベーション)」を通して、成長・高収益市場へと労働力移転させたわけです。
このモデルは20世紀後半の輝かしい成功モデルですが、正直なところ現状は、かなり苦しくなってきているとも言われています。
それは、成長・高収益市場のカタチが変質してきているからです。つまり、高収益の開発や知財という職種は、製造業メインだった昔と比べて、そんなにたくさん“席"がないということです。
日本の同一労働同一賃金は海外と比べて、数十年遅れて導入されます。その間に世界のカタチも激変しています。果たして、日本の同一労働同一賃金がどのように着地するのか、予測が非常にムズカシイところです。
ただ、某政党が以前掲げた「夢は正社員」というのは完全な時代錯誤だと思います。“一億総中流社会"の復活は、夢のまた夢というのが出発点なのではないでしょうか。
榎本 洋