非正規の賃金アップは誰が払うのか

日本の同一労働同一賃金の目的は「同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指す」ことです(出典:厚労省サイト)。

海外と比較して、この「同一企業内」というのが日本型同一労働同一賃金の特徴です。

日本では、非正規雇用者の賃金は正規の6割弱ですが、欧州各国をみると8割から9割の水準です。日本も将来的には欧州並みの水準に近づけたいというのが日本政府の狙いです。

さて、ここで「そもそも論」です。その非正規雇用の賃金アップのための、お金はどこから出るのか。

よく考えれば分かることですが、全員が“高い賃金水準"で同一になれば、とてもハッピーですが、世の中はそんなに甘くありません。本来的には正規社員サイドの賃下げという面が必ず入ってきます。

これは正規社員ひとり一人の賃下げの他に、「正規社員総枠」としてのコストカット、つまり急増する早期退職の募集や、ジョブ型雇用への転換などが含まれます。これが冒頭で書いた日本の労組が同一労働同一賃金に消極的だったと思われる背景です。

まあ、これで正規と非正規の均等・均衡待遇が実現すれば幸いですが、非正規サイドの職務規定を調整して賃金アップを抑制し、正規サイドのコストカットだけが進行したら堪らないという面はありますよね。また話が脱線しました。