植物などの光合成生物は、地球に到達する太陽光の0.1%しか使っていないと言われています。この、あり余る太陽エネルギーを人間が使えるエネルギーに変えることが求められているのです。

水を水素と酸素に分解する「人工光合成」の仕組み

前述のように、光合成の明反応の過程で電子が生じていますので、植物を使ってこの電子を取り出すことができれば電気エネルギーとして使うことが可能ですが、そう簡単ではありません。

このプロセスを人工的に再現し、水から電子を取り出すことができれば、まさしく究極のクリーンな発電になります。これが「人工光合成」ですが、これも極めて困難です。

植物が光合成を行う過程で、水は酸素と水素に分解されます。そこで、人工の光触媒と無尽蔵の太陽光を使って、常温常圧で水を水素と酸素に分解する方法を開発するのが当面の「人工光合成」です。

現在、「人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)」という国家的プロジェクトも動き出しています。

そのARPChemと新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2020年5月29日、信州大学、山口大学、東京大学、産業技術総合研究所と共同で、紫外光領域ながら世界で初めて100%に近い効率で、水を水素と酸素に分解する粉末状の半導体光触媒を開発したと発表しました。

紫外光ではなく太陽光を光触媒が吸収し、水を直接、水素と酸素に分解する「人工光合成」技術の実用化が現実的になってきたといえます。