2021年4月、高年齢者雇用安定法の改正により、本人が希望した場合「70歳までの就業機会」を確保することが企業に努力義務として課されるようになります。

「何歳まで働き続けるか」「そもそも老後とは何歳以降なのか」

60代のみなさんのライフスタイルは、今後さらに多様化してくることが予想されますね。

この春に定年退職をなさるみなさんも、就業を続ける方、経験を生かして独立・起業される方、そして完全に引退して年金生活をスタートされる方など、十人十色でしょう。

そこで今回は、ファイナンシャルプランナーの視点から「60代の貯金額の現状と、老後に必要となるお金」について考えていきたいと思います。

定年60代、みんなの貯金はいくら?

さっそく、金融広報中央委員会による最新のデータ「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和2年(2020年)調査結果」から、60代世帯の貯蓄事情をみていきます。

60代の金融資産保有額

金融資産保有世帯のみ

  • 平均:2154万円
  • 中央値(※):1465万円

平均では2000万円台、中央値でも1000万円を超えていますね。

この結果は金融資産を保有している世帯だけに絞ったものです。そこで、金融資産を保有していない世帯、つまり「貯蓄ゼロ世帯」を含めた結果もみていきましょう。

※「中央値」とは

「平均」は皆さんご存じかと思いますが、「中央値」という言葉は聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんね。中央値とは数値を小さい方または大きい方から並べて真ん中にくる数値のことで、「平均」より実態を反映しやすいといわれています。

60代の金融資産保有額

金融資産を保有していない世帯を含む

  • 平均:1745万円
  • 中央値:875万円

「金融資産保有世帯のみ」の場合に比べて、大きく金額が下がっています。中央値は1000万円に届いていません。

この背景を探るべく、60代の金融資産保有額の分布についても確認していきます。

60代世帯「金融資産保有額」の分布

  • 金融資産非保有:18.3%
  • 100万円未満:3.5%
  • 100万円~200万円未満:4.0%
  • 200万円~300万円未満:4.0%
  • 300万円~400万円未満:3.3%
  • 400万円~500万円未満:4.0%
  • 500万円~700万円未満:5.3%
  • 700万円~1000万円未満:7.5%
  • 1000万円~1500万円未満:7.5%
  • 1500万円~2000万円未満:6.3%
  • 2000万円~3000万円未満:13.3%
  • 3000万円以上:19.6%

ここで注目したいのは、金融資産を3000万円以上持っている世帯が19.6%いる一方で、金融資産非保有、いわゆる「貯金ゼロ」の世帯が18.3%存在している、という点でしょう。

老後のほんの入り口ともいえる60代で、既に二極化ともいえる貯蓄格差が起こっていることが分かります。

金融資産を保有していない世帯を含めたときに「平均」と「中央値」ががくっと下がるのは、このような背景があるからということができるでしょう。