経済成長支援と金融リスク対応の政策のトレードオフ

ここ数週間のオンショア社債発行の回復と、景気の循環的回復の持続を示す経済指標(2020年第4四半期国内総生産 (GDP)の前年同期比+6.5%の力強い成長を含む)を受けて、人民銀行は流動性の正常化再開に向けて自信を抱いた可能性がある。また、市場での過剰なリスクテイクや一部都市における不動産価格の大幅な上昇にも目を向けたものと見られる。

しかしながら、最近の流動性の引き締めや金利の急上昇は一時的なものである可能性が高いと当社は考えている。実際、2月上旬には銀行間取引金利は低下している。

1月の流動性の引き上げは、資産バブルへの警告や金融引き締めへのシグナルを発したわけではなく、市況や経済データに対応した人民銀行の反景気循環的な政策調整の一環であると考えられる。現在、信用取引や株式質権設定の統計から判断して、株式市場にバブルの強い兆しは見られず、また不動産市場のパフォーマンスは都市間でかい離したままである。

人民銀行は、国内外のパンデミックの状況や景気回復の不確実性など、先行き不透明な状況が続く中で、大幅な金融引き締めや資金調達コストの引き上げは行わないとみられる。

一方、コア消費者物価指数(CPI)上昇率は落ち着いた推移を示している。サービス消費の回復が緩やかなものにとどまり、また商品価格や企業の販売価格の上昇を背景とした生産者物価指数(PPI)上昇のCPIへの波及は、短期的には限定的にとどまると見ている。