結婚を続けていたらもらえる年金

最後に、離婚せずにいた場合の年金について触れておきましょう。

加給年金

加給年金とは、厚生年金に加算される扶養手当のようなものです。支給には次に示す要件があります。要件を満たせば、厚生年金に上乗せされて支給されます。

加給年金の要件

出典:日本年金機構「加給年金額と振替加算」を参考に筆者作成

(※対象となる配偶者が加入20年以上の厚生年金受給者、または障害年金受給者の場合は支給されない)

扶養されている配偶者が65歳になった時点で支給は停止されますが、要件を満たした65歳と60歳の夫婦であれば、5年間で200万円近い加給年金を受け取ることができます。

遺族厚生年金

厚生年金保険の加入期間が25年以上ある人が年金受給中、あるいは年金を受け取る前に亡くなった場合、その配偶者は遺族厚生年金を受け取ることができます。年金額は厚生年金の報酬比例部分(基礎年金を除いた金額)の3/4です。

たとえば、先述したモデルケースで夫が亡くなった場合、厚生年金の受給額が80万円なので、妻は60万円の遺族厚生年金を受け取ることができます。妻にはこれに基礎年金が加わるので、78万円(満額)を足して138万円となります。月額にすると11万5,000円です。

シミュレーションをした離婚したケースよりも月3万円多くなりますが、事例として比較するものでもないので、一つの知識として知っておくと良いと思います。

まとめにかえて

最初のイメージは、2人で老後を過ごす場合の年金収入の半分を離婚しても受け取れるように考えていたかもしれません。あくまでも受け取れるのは結婚期間に応じて按分された部分のみです。

お互い独身時代に築いた財産は本人のものです。年金はそれらの時代も含めて計算されるため、按分してみると意外と少ないと感じるかもしれません。一時の感情で離婚を考えてしまった人には、お金の話で冷静になるのも有効かもしれません。

参考資料

石倉 博子