いくらになるかシミュレーション
厚生年金の受給額を計算するには、平均標準報酬額を求め、そこに生年月日ごとの乗率、物価スライドを加味するなど複雑な計算が必要です。ここではそうした難しい計算は抜きにして、前記の簡易な式で求めていますので、あくまでも受給額の目安としてみてください。
モデルケース
夫(会社員)、妻(専業主婦)、婚姻期間25年、勤続年数40年、厚生年金の受給額80万円(平均給与30万円くらい)、分割の割合は1/2とする。
- 妻が受給できる厚生年金額
- 80万円×25÷40=50万円×1/2=25万円
25万円は年額なので、月額にすると約2万円となります。
この他に本人の基礎年金が加わります。現在の基礎年金の満額(月額)を参考にすると約6万5,000円なので、この妻が受給できる年金額はおよそ月8万5,000円になります。
もし、離婚をせず、夫婦で暮らしていたら、月に約20万円の年金が受給できます。また、年金分割ができるのは厚生年金の部分だけなので、仮にこの夫が企業年金(公的年金の上乗せ年金)に加入していた場合、この年金は分割の対象とはなりません。
退職金は財産分与の対象となる?
老後資金として忘れてはならないのが退職金です。退職金は給与の後払いという性質があることから、先述した「婚姻期間に築いた財産は夫婦の共有財産」という考えに則ると、財産分与の対象となるものです。ただし、さまざまなケースがありますので順に見ていきましょう。
退職金がすでに支払われている場合
原則として、財産分与の対象となります。金額は年金と同様、婚姻期間によって変わってきます。
- (退職金額)×(婚姻期間)÷(勤続期間)=財産分与の対象となる退職金額
夫婦の共有財産は2分の1ずつ分けるというのが原則なので、婚姻期間に応じた金額の半分を受け取ることができます。注意したい点は、退職金をすでに使い切ってしまってから、離婚した場合です。この場合は財産分与の対象外となる可能性が高いでしょう。
退職金がまだ支払われていない場合
近い将来に退職金がもらえる場合
退職金が支払われることがほぼ確実である場合は、財産分与の対象になると考えられます。
金額の出し方は2通りあります。一つは、離婚した時点で退職したとみなして、割り出した退職金から婚姻期間に応じて計算する方法です。
もう一つは、定年退職時に受け取る予定の退職金額が分かっている場合は、婚姻期間以外の労働分と中間利息(早くもらった分差し引かれる利息)を差し引いた金額を計算する方法です。
- 離婚時点で退職したとみなした場合の退職金×婚姻期間÷勤続期間=財産分与の対象となる退職金額
- 定年退職時にもらえる予定の退職金×婚姻期間÷勤続期間-中間利息=財産分与の対象となる退職金額
退職金をもらうまで長い期間がある場合
退職の時期がだいぶ先であり、離婚時点で退職金をもらえるのかが不確実な場合は、財産分与の対象とはならない可能性が高いでしょう。ただ、厳格な決まりはなく、夫婦間の取り決めによるもの(まとまらなければ裁判となる)なので、ケースバイケースです。将来支給された時に分ける方法もあるでしょう。