「働き方改革」の一環として労働生産性を向上させるため、またコロナ禍でテレワークが普及したことにより、「ジョブ型雇用」という新しい雇用形態が注目されています。
働く側からすれば、
- 自分のスキルを磨きやすい
- 磨いたスキルを武器にキャリアアップをして給与を上げやすい
といったメリットがあります。
その一方、これまで主流だったメンバーシップ型雇用のように終身雇用を前提とはしていません。そのため、従来の昇給システムや退職金制度が適用できず、デメリットが生じる場合もあります。
特に退職金は老後生活に大きな影響を与える大切な原資です。
そこで今回は、ジョブ型雇用の採用で退職金制度がどう変わっていくのか、についてくわしくお伝えしてまいります。
これまでの「退職金制度」のすがた
従来の退職金制度は、
- 基本給は勤続年数に比例して右肩上がりに上がっていく
- 新卒で入社し、終身雇用が基本
という前提の元に成り立っています。
そのため、自分のスキル向上に合わせて次々と仕事をステップアップしていくジョブ型雇用では正常には機能しません。
「賃金の後払い」としての側面
これまでの退職金は基本的に長年の勤務期間中に積もり貯まった「賃金の後払い」の性格を持っています。
そのため退職金は、
「退職時の基本給×勤続年数に応じた支給係数」
という計算式で算出されるのですが、これは「基本給は下がらない・終身雇用」というメンバーシップ型雇用が前提となっているのです。
「20年以上勤務」で税制面でも優遇
また退職金にかかる税金面でも、「長期間勤務」が有利となっています。退職金の所得控除額は、勤続年数が20年を超える、越えないで大きく異なってくるのです。
退職所得控除額
勤続年数20年以下
40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円)勤続年数20年超
800万円 + 70万円 × (勤続年数―20年)参考:国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
勤続年数が20年以下の場合は勤続1年につき「40万円」の控除額となりますが、20年以上勤務していた場合、20年を超えた分に関しては1年につき「70万円」も控除されます。
これでは「長年勤めていた方がお得!」となり、転職してステップアップする意思を阻害し、ジョブ型雇用の普及を妨げかねません。