「鬼滅の刃」の昨年における興行収入は、2カ月半(10月16日~年末)で約325億円でしたから、全体に占める割合は約23%となり、1つの作品としては破格の数字です。しかも、劇場の最大収容人数を削減した中での結果ですから、驚異としか言いようがありません。

逆に言うと、「鬼滅の刃」が貢献しても前年のおおよそ半減という事実を鑑みると、コロナ禍で映画業界がいかに苦境に陥っているかが理解できます。「鬼滅の刃」の貢献度が低下する今年(2021年)以降の映画業界はどうなっていくのでしょうか。

昨年まで好調が続いてきた映画業界

コロナ禍で壊滅的だった昨年の印象が強いものの、2019年まで映画業界は好調が続いていたことを忘れてはなりません。前述した通り、2019年の興行収入は過去最高を記録し、直近5年間はいずれも2,000億円を超えています。

特に、2019年は、大手映画館が揃って入場料を引き上げ(例えば、TOHOシネマズが映画鑑賞料金を1,800円から1,900円へ+100円値上げ、一般料金)、10月からは消費増税による影響を受ける等、厳しい環境下だったにもかかわらずです。

こうした好調をもたらした最大の要因は、相次ぐ人気作品の登場です。

実際、前掲した歴代トップ10に入るメガヒット作品はなかったものの、「天気の子」(2019年、歴代13位)、「アナと雪の女王2」(2019年、同18位)、「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年、同19位)、「美女と野獣」(2017年、同22位)などの“準”メガヒット作品が数多く登場しました。

一方で、リピート客を増やそうとした業界の努力も見逃せません。現在、映画館では様々な割引サービスを実施しています。レディース・デーやレイトショーの割引はすっかり定着しました。また、ポイントカードシステムも広く普及しており、無料観劇など様々な特典を受けることができます。