分散は場合によっては危険?

しかし、スマホアプリを利用した少額取引でギャンブル依存症になる可能性があると懸念する声も上がっています。

ウォール・ストリート・ジャーナル(※3)によれば、米ニューヨーク大学の人類学教授で、『Addiction by Design: Machine Gambling in Las Vegas(邦題:「デザインされたギャンブル依存症」)』の著者であるナターシャ・シュール博士は少額取引について、「一度に何十という銘柄を1ドルずつ保有することができるため、投資をやめられなくなる可能性がある」と指摘しています。

最近のスロットマシンは一回のプレイで幾通りもの当たり方や配当パターンがあります。何かしらのパターンで当たっていると、全体的には損をしていても気付かず長時間プレイを繰り返し、資金を徐々に枯渇させてしまう、とシュール博士は説明します。つまり、少額の分散保有にこのスロットマシンのワナに似た危険が潜んでいるという主張です。

それに対して、「多くの小口ポジションを保有すると、ポートフォリオの損失に気付かないと指摘するのは、分散投資に反対するようなもの」とロビンフッドの製品管理担当シニアディレクターのマドゥ・ムトゥクマール氏は反論しています。

一般的に分散投資はリスク軽減の基本といわれています。しかしそれは経験則を参考に熟慮した有効な分散、運用をしている場合です。知識や経験の浅い投資家が、目先の数字だけで闇雲に複数の銘柄を繰り返し投機することを分散投資といえるのでしょうか。ただ、全体像をつかみづらくしているだけかもしれません。

2020年12月、ロビンフッドは米マサチューセッツ州の証券規制当局に、経験の浅い投資家を適切に保護していないということで提訴されました。ロビンフッドのアプリはゲーム化したサービスで若年層を刺激し、頻繁に取引させるようデザインされていて「依存性が高い」と問題視されていました。若い顧客が損失の勘違いから自殺、という悲しい事件も引き起こしてしまいました。