このように市販の使い捨てカイロには色々なものが入っていますが、これは酸化反応が一気に起こると熱くなりすぎ、ゆっくりすぎると温かくならないため、温度と保温時間を制御するためです。

脱酸素剤

また、使い捨てカイロと同様の現象は別の商品でも利用されています。

食品の袋の中に、「食べられません」と書かれた小さな袋をよく見かけます。これは酸素吸収剤・脱酸素剤で、三菱ガス化学のAgeless(”年を取らない”の意)が知られています。食品は酸素により酸化反応を受けて、その品質が劣化しますので、酸素を取り除けば食品の日持ちがよくなるわけです。

この脱酸素剤には、使い捨てカイロで使われている鉄よりも活性な鉄粉が使われています。したがって、食品の袋を開け、しばらくして脱酸素剤の小さな袋を触ると熱いと感じることがあります。

食品は多かれ少なかれ水分を含んでいますので、この場合にも使い捨てカイロと同様の反応が起こり、鉄が酸化反応を受けることにより食品の袋中の酸素が取り除かれる仕組みになっています。

このように錆、使い捨てカイロ、脱酸素剤は一見関係ないように見えますが、化学的には全く同じ反応が起こっていることが分かります。

エコカイロ

近年、酢酸ナトリウムを含む酢酸水溶液に、コイン状の金属片を封入したビニールパックが「エコカイロ」の名前で売られています。内封の金属片で刺激すると結晶化し、約50℃前後の発熱を1時間ほど持続します。放熱後は熱湯に入れ吸熱させることで結晶を溶かし、繰り返し使用が可能です。

これは溶液が溶解度以上の濃度である過飽和状態にあっても、しかも凝固点が室内温度以上かつ過冷却時(凝固点以下の温度)にあっても凝固しにくい、極めて安定な酢酸ナトリウムの性質を活かしたものです。

過冷却時に何らかの刺激(振動など)を加えると結晶化が始まり、その時に発生する凝固熱を利用するという化学物質の性質をうまく活かしたカイロと言えます。