受験生の必需品、使い捨てカイロが程よく温まる化学的理由

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新型コロナ第3波による緊急事態宣言下、しかも厳しい寒さの中、受験シーズンが到来しました。受験生の寒さ対策に必須なのは使い捨てカイロですが、どんな物質が使われているのか、なぜ温かくなるのかは意外と知られていません。

スーパー、ホームセンター、ドラッグストアなど、身近なところで販売されてる使い捨てカイロを含め、懐炉(カイロ)にまつわるの化学的メカニズムについて説明しましょう。

ハクキンカイロ

カイロとは化学発熱体や蓄熱材等を内蔵し、携帯して身体を暖めるものと定義されています。その歴史は古く江戸時代まで遡りますが、筆者が昔から親しんでいるのは「ハクキンカイロ」です。これは、使い捨てカイロが登場するまで広く愛用されていました。

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その発熱保温の原理は化学と密接に関係しています。「ハクキン」は貴金属の白金、つまりプラチナです。白金は化学反応の触媒として広く利用されており、たとえば、ガソリン車の排気口から出る有害物質を浄化する触媒としても使われています。

ハクキンカイロは、注油したベンジン(炭素数5~10の炭化水素、原油を精製して得られ、ナフサや石油エーテルなどとも呼ばれる、衣類の汚れを落とす溶剤)を気化させ、白金触媒表面で穏やかにCO2と水に酸化させるときに発生する熱(触媒燃焼熱)を利用しています。

使う際に白金触媒を130度以上で加熱するだけで、ベンジンを加熱燃焼させているわけではありません。そのためクリーンな発熱で、一般的な燃焼に伴う窒素酸化物がほとんど発生せず、ベンジンを注油すれば何度でも使える利点があります。使い捨てカイロの13倍もの熱量を発生しますので、寒い中でのスポーツや仕事に適しています。

80年以上の歴史があるハクキンカイロが、今でも販売されているのは驚きです。しかし、ハクキンカイロは、炭化水素のベンジン(燃料)を使うこと、熱くなりすぎることによるやけどの危険性、容器が金属製であるといった使い勝手の悪さがあります。そのため、現在は安価で便利な使い捨てカイロが主流となっています。

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執筆者

徳島大学名誉教授、元副学長(教育担当)・理事。元4大学で非常勤講師。元学童保育支援補助員。現在、東京理科大学非常勤講師、たまプラーザがん哲学外来カフェ代表。青山学院大学理工学部化学科卒業、同修士課程修了。東洋醸造(現、旭化成)研究員、東京大学研究生、東京工業大学助手(理学博士)、米国パデュー大学とカリフォルニア工科大学博士研究員を経て、広島大学助手、講師。徳島大学助教授、教授、総合科学部長、2012年3月定年退職。専門は化学(有機合成化学)。教育、生と死、超高齢多死社会、文明の危機に関する拙文執筆と講演。著書に『定命 父の喪・母の喪―息子が遺してくれた生き直す力―』文芸社。横浜市在住。